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2014/11/10

『雨柳堂夢咄 其ノ十五』 波津彬子 / 朝日新聞出版 Nemuki+コミックス

Photo_2朝日ソノラマはつぶれても、百鬼夜行抄と雨柳堂は残る。『雨柳堂夢咄』、その十五巻め。

骨董屋「雨柳堂」主人の孫息子、年齢不詳の「蓮」を道案内に、持ち込まれるモノどもの引き起こす悲喜こもごもが綴られる。
蓮はいわゆる妖怪や精霊が「見える」タチなのだが、ことさら騒ぎも祓いもせず、静かにことの次第を眺めて過ごす(ときどきは巻き込まれてひどい目に遭う)。
骨董品にこもるのはすでに亡くなった人々の哀切な思いであることが多いが、波津はそれを必ずしも愁嘆場とせず、モノに喋らせたり、モノを走らせたり、穏やかなユーモアで淡くくるむ。

桜の花守の登場する「桜守」、悪用された屏風をめぐってややダーティにホラーする「採蓮図」、珍しく蓮以外の「見える」キャラ登場、しかもハッピーエンドな「酌めども尽きず」、不幸な娘が大切にし続けた張り子のお守り「福良雀」、きりしゃん橋姫の艶姿「橋姫不在」など合わせて7編、最後の「神かくし」でシリーズ百話め。

初期の波津作品では、悲嘆がやや過剰だったり、軽妙なコメディにも若干の押しつけがましさがあったものだが、最近は悲哀や諦観、ユーモアや嫉妬心など、すべてをあっさり向こうが透けて見えそうな薄い生地に仕込むことによって上品な藍色の作品世界の構築に成功している。マンネリと謗りたくば謗れ、職人の技とはそういうものだ。

薄い絹生地やサテンやリンネルを重ねて。薄いパイ生地を重ねて。いや、それでもずいぶんこってり分厚い感じだ。もっと薄い、すっと薄いものをさらり重ねて、それでも全体が薄くて軽い、そのように。

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