秋の夜、足元を暖かくして読む 『世にも不思議な物語 世界の怪奇実話&都市伝説』 レノア・ブレッソン、尾之上浩司 訳 / 扶桑社ミステリー文庫
50~60年代アメリカの超常現象再現番組『世にも不思議な物語』(DVDも発売中)からのノベライズ、全10話収録。
50年以上昔のTV番組ということもあり、細かいところではいろいろ古めかしいが、いたずらに怪奇をあおらず、それぞれきちんと「ノベル」に仕上がっているところが素晴らしい。読みやすく落ち着いた翻訳もいい。
ヒロインが意図せぬ文章を書いてしまう「クララからのメッセージ」は現代のストーカー殺人に通じる恐ろしさ。悪霊憑きがテーマの「呪われた花嫁」はウィリアム・アイリッシュの短篇に匹敵するサスペンス。サーカスを稼業とする家族の危機に一瞬の奇跡が訪れる「空中ぶらんこ」。グライダークラブのいさかいをめぐる「再会」は途中で待ち受ける結末の見当がつくが、それでも説明のつかなさにゾッとする。構成が二段階になっている「サリーに会ったときは」では、最後にすべてが明らかになってはじめてその哀切な怪異に胸を打たれる。などなど、モーパッサンもかくやのストーリーが並ぶ。
昨今の実話怪談では、よく読むとその怪異を体験したのは語り手当人だけということも少なくない。本書では、複数の目撃者がいたり、その特殊能力がなければ事件が解決しなかった、など、いずれもなんらかの条件が鍵となっていて好もしい。
もう一つ。この10話に共通するのは、【復】という概念ではないか。復帰の復、復興・復活の復、そして復讐の復。
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ご返事、ありがとうございます。
アメリカ社会の問題点がちらほら見えてくるあたりも、実話がベースの物語だからでしょうね。
今後も面白い本を出すよう努力いたしますので、ご支援いただけると助かります(次はホームズ系の予定です)。
投稿: 尾之上浩司 | 2014/11/21 09:59
(なんと。著者ご本人からのコメントです。どきどき・・・)
コメントありがとうございます。
この時代のテレビ番組は、洋の東西を問わず、作り手の意気込みがこもっているというか、30分、1時間でひとつの閉じた世界をきっちり描いてくれるものが少なくありませんでしたね(CGとかないので、映像的にはチープだったりしますが、それを補ってあまりある想像力への喚起があった)。
本書はそんな時代のB級っぽいチャレンジ精神と、その一方で静かな諦観のようなものを伝えてくれて、とても豊かな時間を過ごすことができました。
今後も面白い本を発掘、提供いただけますよう、期待しております。
ps この当時は、あれほど進んで見えたアメリカ社会も、パワハラ、DVの巣窟だったのだなーと感じる次第。サリーの存在が切なくてなりません。
投稿: 烏丸 | 2014/11/03 02:09
ご購読、ありがとうございました!
お楽しみいただけただけでなく、深く読み込んでいただけて、作り手としてもとっても嬉しいです。
元のドラマを小説にするときに、構成を工夫してあるなど、それとなく手間をかけているのが嬉しい原書でした。
昔、偶然ピーター・へイニングのアンソロジーに「血まみれの手」が収録されているのに気づいて原書の存在を知ってから(英米のノベライズ関連資料にも、この原書のデーターは欠落しているのです)訳出したかったものです。
今後も、レアで面白い本を発掘してまいりますので、応援していただけると光栄です。
ひとまず、お礼と裏事情まで。
尾之上浩司拝
投稿: 尾之上浩司 | 2014/10/29 16:22