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2014/09/21

楽しみの〝税金〟 『コンプレックス・エイジ(1)』 佐久間結衣 / 講談社 モーニングKC

Photo「趣味は読書、音楽鑑賞」──これはパッとしない。そのパッとしないセリフを誰が口にするかといえば、五人に四人は読書も音楽鑑賞もロクにしない趣味なし連、そして残る五人に一人が、正直に口にしたら相手に引かれてしまうイタい趣味の持ち主である。そうですよね。そうでしょう?

『コンプレックス・エイジ』のヒロイン片浦渚は「26歳、派遣社員、趣味=コスプレ」。
穏やかな少女マンガ風の作画だが、コスプレへの細かいこだわりはすごい(らしい)。
衣裳やウィッグ、小物の扱い、それらを収めて運ぶカート、会場、マナー、ポージング、などなど。巻末に「コスペディア」と称して3ページのコスプレ用語解説集が付いている(勉強になります)が、本編に込められたこだわりはとうていそんなボリュームで網羅できるものではない(らしい)。

しかし本作は、そういったコスプレのこまごまに比重をおいた、いわばコスプレオタッキーな作品ではない。ヒロインをあの手この手で痛めつけるストーリー展開、そこにこそ本領がある。完璧主義ゆえに起こる周囲との齟齬。キャラ立ちするには背が高すぎる。自分よりコスプレの似合う後輩の登場。
だから本作はコスプレに詳しくない我々のような普通男子の胸まで打ちのめす。

一つ、気がついたことがある。本作のストーリー展開が、企業の、いわゆる業務オペレーションフローに近い構造をもっていることだ。「コスプレを楽しむ」という大きな目的の途上に、背が高い、時間がない、布がない、後輩の登場、ローアングルで撮られた、といった大小のイベントがあり、そのYES、NO分岐を自身や友人、カメラマンの評価で処理しつつ常にメインフローに戻ってくる。
ただ、このフロー図に「いつまでも楽しめる」というクローズはないのだ。

単行本の1巻は、派遣社員である渚が、趣味を内緒にしている勤務先の葉山女史にコスプレを路上で見られてしまうシーンで終わる。この後、葉山女史をめぐるストーリー展開の痛々しさは半端じゃない。
すべてのイタい趣味持ち必読だ。一緒に泣こう。泣きましょう。

P.S.
『コンプレックス・エイジ』というタイトル、またこの表紙絵。ほかに手はなかったのだろうか。コスプレそのものを俯瞰して描いた特異性がこれでは伝わらないのが惜しい。

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