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2014/08/18

ご安全に! 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(1巻) 竜田一人 / 講談社 モーニングKC

Photo福島第一原発の現実……といった類の観点からはすでにあちこちで称賛されているので、ここで今さらどうこう書いてもしょうがない。

ちょっと不思議に感じるのは、この作品に「驚く」方々は、工事の現場をご存知ないのだろうか。
原発事故現場に限らず、あらゆる工事オペレーションにはそれぞれ困難が伴い、各業者は発注元から発注先、孫請けひ孫請けにいたるまでその困難に対応しようと工夫を重ねる(もちろんできるだけ金は使わない)。そういう構図を理解できていれば、この作品に描かれているこまごまには基本的に不思議はない。「驚く」ほうが想像力不足なのである。

むしろ不思議に思えたのは作者のことだ。
カバーには「震災後、当時働いていた会社を辞し被災地のためになる仕事に就くことを決意する。(中略)紆余曲折を経て福島第一原発で働くことに」とあり、さらに休憩所のサーベイ業務から希望して線量の高い現場に移る。
作中にも「俺の中には最前線への思いがふくらんでいた」等々とあるのだが、彼をそこまで駆り立てていったものが何であったのかは、今ひとつ明らかでない。今後連載が続くにつれ、詳らかにされていくのだろうか。

また、作者は「売れない漫画家」だったとのことだが、よほどの素地があったのか、いきなりの連載でこの画力には驚く。
作業員として働いている間、いちいち状況や器具、装備類など撮影などできたとは思えず、それでこの細密な描写。人物についても、(マンガ的カッコよさやパースの正確さはさておき)働く男たちのそれぞれ朴訥、豪胆、狡猾な表情を描き分ける力は大変なものだ。

Photo_2ところでこのタッチ、どこかで見たような……とずっと気になっているのだが、どうしても思い出せない。麻雀漫画誌あたりか?

右は土山しげる『野武士のグルメ』(幻冬舎)の1カット。鼻や口の描き方などはまったく違うのだが、眉や目の周辺、また細かい描写へのこだわり、女性がほとんど登場しないなど類似点も多く、竜田一人も同じ系譜から出てきたのではないかと思われてならない。どうだろう。

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