フォト
無料ブログはココログ

« 悪酔いトラップス 『魔術師(上・下)』 ジョン・ファウルズ、小笠原豊樹 訳 / 河出文庫 | トップページ | 巨木倒す ~長編マンガの最終回~ »

2014/06/03

Die versunkene Glocke 『メディアの苦悩 28人の証言』 長澤秀行 編著 / 光文社新書

Photo_2ここ数年、テレビや新聞を「オワコン」「マスゴミ」扱いし、その凋落を取り沙汰した書籍、雑誌は枚挙にいとまがない。
本書『メディアの苦悩』もメディアの危機を憂う1冊ではあるのだが、想像していたよりは格段に良書だった。

編著者の長澤秀行氏は、電通入社後、新聞広告を15年間担当、インターネット創成期にはデジタル・ビジネス局局長としてヤフーなどのネットニュース事業の立ち上げに携わり、のちサイバー・コミュニケーションズ代表取締役社長としてメディアレップ事業(インターネット広告の一次代理店業)を指揮。つまり、新旧メディアの現場で広告業を展開、実践してきた辣腕の人物、ということである。

その長澤氏が選んだインタビュー対象者の幅は広い。
大手新聞役員、テレビ局役員、ヤフー・ドワンゴ・ツイッター・ミクシィ・LINEなどのIT企業関係、ジャーナリスト、批評家、大学教授、広告クライアント……。

その28人が、それぞれ自らのかかわるメディアの都合の悪いところ、よいところを臆さず語る。
各メディアはさまざまな問題を抱えているが、いたずらに後ろ向きになるわけではない。いずれタダモノでない語り手ばかりである、全ページ、鋭い警句(と若干の身びいき)があふれる。
従来のメディア亡国論と異なるのは、語り手の幅を広げたことにより、よしんば紙の新聞やテレビの状況が危機的であったとしても、ダメ/ダメでないという二律背反のみに与せず、どのような生き残り方があり得るか、共存の可能性まで話題が広がっていることだ。

残念なことに編著者の物分りがよすぎて、語り手の言葉をその都度すんなり肯定してしまう。そのため、1冊の書籍としてみると、今後メディアがどちらに向かうべきか、そのあたりの主張ははっきりしない。
個人的意見としてでも、甘いものは甘い、切るべきものは切る、そんな姿勢も必要だったのではないか。
それでも、メディアの行く末を読み手各自がさまざまなスタンス、アングルから考える契機となる、その点をとっただけでも十分推奨に値する。よい意味で非常に疲れる本、ということも追記しておきたい。

なお、本書の別の(意地悪な)楽しみ方として、5年ばかり経って読み返すのもあり、と思う。
ここに取り上げられた多数のメディア、サービスのうち、はたしてどれが5年後も生き残っているのか。あるいはここにまだ登場していない全く新しい何かが覇者として君臨しているのか。
(たとえば本書ではハフィントン・ポストを比較的高く買っているようだが、オーマイニュースが苦戦したことを考えると、易々と成功するかどうか……。)

« 悪酔いトラップス 『魔術師(上・下)』 ジョン・ファウルズ、小笠原豊樹 訳 / 河出文庫 | トップページ | 巨木倒す ~長編マンガの最終回~ »

テレビ・新聞・雑誌・出版」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547008/59750623

この記事へのトラックバック一覧です: Die versunkene Glocke 『メディアの苦悩 28人の証言』 長澤秀行 編著 / 光文社新書:

« 悪酔いトラップス 『魔術師(上・下)』 ジョン・ファウルズ、小笠原豊樹 訳 / 河出文庫 | トップページ | 巨木倒す ~長編マンガの最終回~ »