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2014/04/25

これも読んでみた 『食堂かたつむり』 小川 糸 / ポプラ文庫

Photo こちらもベストセラー。
で、は、あるのだが──いろいろ、わからない。

パステルカラーの表紙や、一日一組だけ客を招く食堂という設定から、いわゆる「癒し系」、「ハートウォーム」のイメージが思い浮かぶ。
しかし実のところ主人公をめぐる人間関係は、およそ穏やかでない。黙って家財道具と貯金を持ち逃げするインド人の恋人(主人公はそのショックで声を失う)、長年いがみ合ってきた母親。郷里を牛耳る母親の愛人。
おまけに物語後半には、その母親さえ余命半年だと知らされる。
ここまで「盛る」必要があっただろうか?

よくわからないもう一つの理由は、書かれていないところに想像、説明が及ばないことだ。

インド人の恋人はなぜ主人公を捨てたのか。
かつて飛び出してきた郷里に向かう主人公。それはなぜか。
母親のヘソクリを盗もうとする主人公。それを親への甘えとは感じないのか。
主人公が母親に反感をもつのはともかく、なぜ母親までが主人公に冷たいのか。
母親はなぜ、よりにもよってペットとしてブタを飼っていたのか。
客に応じて山海の珍味でもてなす料理店が、なぜ一日一組で採算がとれるのか。
特別に修行をつんだとも思われない主人公が、なぜ和洋中オールマイティな料理の達人なのか。
一日一組、予約制の料理店を「食堂」と名づけるセンスは妥当なのか。
同じく「かたつむり」と名づけるセンスは妥当なのか。
後半、信じがたい食材が描かれるが、なぜ主人公は平気なのか。
……

つまるところ、章ごとに悲しい、嬉しい、美味しい、のイベントがそれなりに濃く描かれてはいるのだが、ちょっと引いて見るとただばらばらと置いてある印象。

ストーリーや人間関係における有機的な結びつきより、単に個々のイベントごとの「刺激」(あえて言えば「癒し」も刺激の一種)の羅列として小説を組み立てる作家がときどきいるが(テレビ関係の作家に多いようだ)、この作品もそんな感じだ。
ダシの効いてないうどんのツユに、醤油や砂糖や唐辛子をぶっかけていく、とでもいうか。
それを平気で「甘くて美味しい」「辛くて美味しい」と喜ぶ読者が少なからずいるようで、それはそれで気持ちが悪い。

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