今もいる 『女たちの怪談百物語』 東 雅夫 監修、幽編集部 編 / 角川ホラー文庫
本郷のとある旅館の一室にこもり、宇佐美まこと、伊藤三巳華、岩井志麻子、加門七海、長島槇子、三輪チサ、神狛しず、宍戸レイ、立原透耶、勝山海百合の女性作家十人が百物語に挑む。
東雅夫の会主口上、京極夏彦のものものしい見届人記が余計と思われるほど、全体に楽しそうで羨ましい。
修学旅行で、三々五々一つの部屋に集まり、つい怖い話を始めてしまって止まらない。そんな印象。
体育座り。
お話はいずれも友だちの友だちの経験談だったりでそれほど奇矯なものはないのだが、つい語り手の耳元で「へえ」とつぶやいてみたり、ブレーカーが落ちて床から十センチくらいの高さで「停電だ! 停電だ!」と騒いでみたりしたくなる。
「私の話はこれで終わりです」
「私の話は、以上です」
との話のつなぎもどことなく淑やかで、なかには耳が赤く凍るような怖い話もあるが、「その子のことなら分かってます」とか「ああ、そうでございましたか」ですまされる薄墨な話のほうがむしろ好もしい。
欲をいえばせっかくこうして集ったのだから、「宿といえば」「そうそう、私も宿について」「こちらも宿の話」とか、「同じ人のような気がします、私の友だちもその」といった按配、“怪の連鎖”がもっとあってよかった。
なまじ事前に怪談を用意できる力量のある語り手に、それも順番をきちんと守って語らせたため、前の話、次の話のつながりがやや千切れてしまった。
体育座り。
もう一つ。これは会主、見届人の側の問題なのだが、1ページとって
「いにしえよりの作法に則り、九十九話にて完。」
としたのはいかがなものか。
百物語に作法があるなら正しきはあくまで百話語り切ることだろう。
無謀なお招きをしないよう九十九話で収めたり、本のうち一話だけ番号を振らなかったりすることが多いのは承知しているが、それらはあくまで破格。仰々しく作法など語らず、「今回はこれにて完」で済ませてもよかった。
体育座り。
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