きみょうな死体 『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』 小林弘利 / 角川文庫
「怪奇大作戦」といえば、円谷プロが「ウルトラセブン」に次いで手掛けた作品(1968~1969年、TBS)。
狂った天才科学者たちが暗躍する切なくも凶悪な犯罪事件、その謎を追う「科学捜査研究所」(SRI)の面々に個性豊かな俳優を配し、ドラマ性と漆黒の映像美を打ちたてた特撮テレビドラマである。その作風は「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」で怪獣博士化していた当時の子どもたちの日曜日を後戻りできない大人の夕闇に誘ったものだ。
それから45年。
この秋角川文庫から発行された『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』は、NHK BSで放送されたシリーズ新作4話のノベライズ。
断っておくが、サイエンスホラーとして、本書収録短編の出来そのものは決して悪くない。各作に通底する重さ、行き過ぎた科学が引き起こす事件の悲惨さ、トリッキーさなどなかなかのもの、と評したい。
(ノベライズの文体も心理描写が豊かで、ドラマのノベライズによくあるセリフにト書きの金釘流ではない。)
ただ、急激にミイラ化した変死体にマスクもなしに素手で触るなど(空気感染あるいは接触感染する病原菌が死因だったらどうするつもりだ)、捜査手法上のいくつかの細かな疑問点以上に、どうしても違和感を感じざるを得ないのは、SRIのメンバーに的矢、牧史郎、三沢京介など、旧作と同じ名を割り振っていることだ。
旧作における原保美の的矢所長、(怪優!)岸田森の牧史郎、勝呂誉の三沢京介、加えて(科特隊キャップ!)小林昭二の町田警部。これらはそれぞれの代表作といえるほどはまり役だった。それを同じ名のまま役者を変え、キャラを変え、設定を変え、とくに所長や警察側の窓口にいたっては男優から女優に変えているのだ。初代ドラマを見知っていて混乱しないわけがない。
もう1つ。
SRIを予算に窮乏する官民出資の第三セクターとするなど、現代風なリアリティを追求したがゆえに、ストーリーが縛られた。捜査権がないため警察からの依頼がなければ(依頼が取り下げられては)それ以上調査ができないという設定は、ストーリーにシリアスフレーバーこそ付け、「怪奇大作戦を社会派ドラマにして何が面白いんだ」という気のしなくもない。
また、ネタバレになるため詳しくは書けないが、いくつかの作品において犯人像、そしてSRIがその正体を明らかにする作業が同工異曲と化した。これもリアリティに追われたためだ。
もちろん、洋館地下室で試験管とビーカー(ゴポゴポと白い煙を吹く)を手にするマッドサイエンティストや南の島のプールの地下にロケット発着場を敷設する大金持ちなんて今どき描くことはできない。それは正しい。正しいのだけれど。
どうせホラ噺なんだから、もう少し身勝手なホラを吹いてもよかったのではないか。
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文庫掲載のスチール写真からの推測で、本文には
> ただ、急激にミイラ化した変死体にマスクもなしに素手で触るなど
と書きましたが、先日地上波で放送されたものによると「素手」に見えたのは極めて薄手で丈夫な手袋を装着していたようです。
お詫びして訂正いたします。
・・・とはいえ、マスクをしていないのはやっぱりマズいでしょう。相手は菌類だったようだし、なおさら。
投稿: 烏丸 | 2014/12/31 01:23