『FKB ふたり怪談 弐』 黒木あるじ、我妻俊樹 / 竹書房文庫
もう1冊。
先の『黒異本』に比べれば地味、さほど怖くない、短い話が多い。
ただ、文字で書かれた怪談には、水をかき混ぜ、濁らせるものと、水の澄むのを待つものがある。本書の書き手二人がどこまで自覚的かは知らないが、いくつか後者を意図したと思われる作品があって、そこはよかった。
実話怪談と称する怪談群が、実際に著者以外の誰かが語った体験談をまとめたものなのか、著者が一人でこしらえたものなのかは知らない。どちらであるかにも興味はない。読み手にとっては、怖いか怖くないか、面白いか面白くないか、それだけの話である。
ただ、私見ながら、誰も体験などしていない怪談、ただ想像の力のみでそっと掬い取られた怪談が身震いするほど恐ろしい──そういった怪談のありようこそがなにより好もしい。それこそが創造力、あるいは言葉による表現者のみがなしとげられる技だからだ。
本当の重い石を手渡してその重さを共有するなら、言葉でなくともできる。
存在しない石をそっと掌に置いて、受け取った者が「あ重い」「少し冷たい」と言ってくれたなら。……その青い重さ、赤い冷たさにまさる書き手読み手の愉しみはない。
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