『妖しい怪奇譚 実録怪談集』 平谷美樹・岡本美月 / ハルキ・ホラー文庫
メロンやイチゴ同様、最近は実話怪談の本が四季を問わず店頭に並ぶようになった。とはいえさすがに盛夏、旬ともなると各社揃い組みで新刊出来。実話怪談の夏、日本の夏。どんどどーん(遠景に花火)。
さて、実話怪談の本を読み始めると部屋の隅から家鳴りとともに線香の匂いがしたり窓の外につらそうなユニゾンが聞こえたりするのはけったい至極だが、とりあえずこの夏も目についたものから買って読んでみよう。
『妖しい怪奇譚 実録怪談集』は従来『百物語』と銘打ってきたシリーズ、その12巻めにして最終巻。
もともとスプラッタな落ちや因果因縁を求めない方針の本シリーズではあったが、ここにいたってもはや地味の極み。
今どき、車を走らせていたら屋根の上に何かがどんと乗った、夜道を歩いていたら遠方にゆらゆら狐火が見えた、金縛りで誰かに足をつかまれた、程度で「怪談」として一項立てられてはむしろ戸惑ってしまう。
すべてを気のせいや偶然と断じるわけではないが、こういう話は最低でも車の屋根に手の跡がついていた、足に指のかたちの痣が残ったなど、気のせいでない論拠が示されてはじめてぞっとするのではないか。
そもそも、心霊現象体験者の語った通りが実話なのではなく、その語りからにじみ出る歪みを伝えてこその怪談本だろう。
著者は誠実な人物なのかもしれないが、巻を重ねるうち、素材のまま提供することに拘泥し、怪談を語る本来の目的からどんどん外れてしまったように思われてならない。
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