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2013年6月の3件の記事

2013/06/28

ら。ら。 『ラティーノ (1)』 おおひなたごう / 講談社モーニングKC

Photoラティーノは肉食系ティラノサウルス。
肉巻きおにぎりが大好き。
たまにお邪魔、ときどき迷惑なラティーノ。
だけど心はレディー。
野球選手、刑事、サンタの手伝い、プロモーター、忍者、初恋の乙女、宇宙飛行士──何にでもなれる、ラティーノ。

本作はそんなラティーノを主人公としたショートギャグ集なのだけれど、どこか不思議な味わい。
最初のうちはいわゆる不条理ギャグかと思っていたが、子どもたちに好かれ、友だちとくつろぐラティーノを見ているうちにお茶でも煎れて一服したくなる。

そこで烏丸もひとつ、マンガ原作にチャレンジしてみた。


  女流棋士として名人に挑むラティーノ。
  手より細かい作業の得意なシッポで指す。
  対局者に背中を向けて肉巻きおにぎりを食べるラティーノ。
  歩が成ると裏は赤い「」。
  「」と「」ではさまれた駒は全部「」になってしまう。
  大接戦の末に詰んだ駒は「ら王」。
  我が生涯に一片の悔いなし。

2013/06/13

頑張れ中のひと 『サッカーの憂鬱 ~裏方イレブン』(現在2巻まで) 能田達規 / 実業之日本社 マンサンコミックス

Photoオーレ!』でプロサッカーチームの運営を描いた能田達規。本作も変わらずの現場目線、審判、実況アナ、通訳、ホペイロ(用具係)、クラブ広報など、チームや試合を支える裏方に焦点を当て、それぞれの不断の苦心とサッカーに捧げる情熱を描く。

一編一編は小振りだが、プロの職人ぶりを紹介するドキュメンタリーライクな読み応えと、裏方を応援する穏やかで誠実なコマ運びが読み手を温める。

一方、どうしても
  普段は軽んじられる
  (存在そのものを意識されない)
  ⇒ 選手活躍、裏方に感謝
という展開が多くなり、バリエーションに欠けるのは否めない。
そのため、1巻はまだしも、2巻までくると似かよったエピソードが出てきたり(チームドクターとフィジカルコーチ)、正キーパーや女子チームの選手の活躍が描かれたり(裏方でさえない)、それが作品全体の甘さにつながってしまう。

とはいえ集団スポーツを描くとき、こういった裏方──というよりそのチームや試合を成立させる「個々の仕事」──への目配り、尊重は欠かせない。初期にあれほど輝いて見えた『GIANT KILLING』がいまやテンポの悪い団子汁にしか見えないのもその姿勢を途中で置き忘れてしまったせいではないか。

なので、せめてタイトルをひと工夫し(『サッカーの憂鬱』ではあんまりだ)、原作付きとは言わないまでもネームにアドバイザを立て、数編に一編は裏方の徒労感がにじみ出る重めの話を混ぜるなどすれば格段に重厚な作品集となるのは間違いなく……。ところがどっこい、そんなものは松山県民(チガウ…)能田達規の作品とは言えないのであった。
GIANT KILLINGもなかなか難しいのである。

2013/06/10

『言霊』 山岸凉子 / 講談社 BLKCDX

Photoバレリーナを目指す高校一年の澄(さやか)は「本番に弱い」という周囲の評価に抗うため、ついライバルの失敗を望んでしまう。しかし……。

山岸凉子らしい怖さ、残酷さに欠け、同じ作者の短編中必ずしも上位にくるものではないが、大作『舞姫(テレプシコーラ)』の余波としてしばらくこういった作品が描かれるのも致し方ないかもしれない。作者が次なるテーマに挑むのを待ちたい。

単行本の後半、作者周辺の怪異譚を紹介したエッセイ風小品集「快談・怪談」中、作者が(うっかり間違って注文してしまった)実録怪談本を読もうとするたびに「家鳴り(やなり)」がする、という話がある。
ケサラン・パサラン』で建てた家が「怪」を拒否しているのでは──ということなのだが、その本が家にあるだけでは何も起こらず、読み始めると家が鳴り出すというのもまさしく「言霊」の類かと思われ、作者のこの考え方の根深さを面白く思った。

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