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2013/04/15

ゲテゲテ 『怪樹の腕 〈ウィアード・テールズ〉戦前邦訳傑作選』 会津信吾・藤元直樹 編 / 東京創元社

Photoアメリカのパルプマガジン「ウィアード・テールズ」(1923)掲載作で戦前に邦訳、発表されたものを探し出し、そのまま(さすがに仮名遣いは改められている)収録した、編者陣渾身の一冊!

「ウィアード・テールズ」から編まれた怪奇小説アンソロジー「ノット・アット・ナイト(夜読むべからず)」シリーズからの邦訳を追い……といった編纂の経緯と苦労は巻末の資料に詳しく、それだけでも読み応えがあるのだが、それ以上に「ひとつの原作に複数の邦訳がある場合は、(中略)ゲテモノ度が高い方を優先的に採用するよう心がけた」、その志が闇黒(すばらし)い。

「ウィアード・テールズ」といえばH・P・ラヴクラフトらを輩出した伝説の雑誌──ではあるが、ありていにいえばB級、三文ホラー誌に過ぎない。したがって作品の質は玉石混交、いや石だらけ、ほとんど荒唐無稽。それを、思い切り著作権意識のぬるい時代、しかも「翻訳小説は載せない」なんて編集方針の日本の雑誌が載せるのだから、もう滅茶苦茶。作者名や登場人物は日本人にすり替わるわ、男女は逆になるわ、肝心な怪奇の説明がスルーされたり、結末が違ったり。
とはいえ、機に応じて才を発揮する傑物はいるもので、当時の読み手によりスリリングで面白く改変するワザに長けた翻訳家がいた、などという話もまた楽しい。

ともかく、全22作、いずれも「なーんやそれ」と言いたくなるような奇天烈な展開、それもいかにもなマッドサイエンティストが登場し、しかつめらしく一寸見科学的な小芝居をしてみせるものがたまらない。
一から十までよく出来てるな!と感心してしまうのが「洞窟の妖魔」、一から千まで馬鹿馬鹿しくて楽しいのが「成層圏の秘密」。成層圏の何がどう秘密なのかは、ぜひご自身で確かめて衝撃を受けていただきたい。一方、不可思議なのが表題作「怪樹の腕」、何が不思議って、なぜ、よりによってこんなものを表題作に……。

などなど、(将来廉価な文庫になったとしても)万人にお奨めできるような本ではないが、「ウィアード・テールズ」「経歴その他一切不明」といった言葉に尖った耳がピピッと立つような方は生贄をついばむ緑色の触手をしばし休め、黒い翼をバサバサとなびかせて夜の書店にゴー。

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