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2013/04/22

『重版出来!』 松田奈緒子 / 小学館ビッグコミックス

Photo「重版出来」は「じゅうはんしゅったい」と読む。
出版において、初版と同じ版で刷り増しできたことを示す。
「どうやらこの本で利益を得られそうだぞ」という版元の祝詞でもある。

柔道でオリンピックを目指したが、ケガでそれを果たせなくなった「私」。「私」はかつて自分を柔道の道に誘い、その後も常に自分を楽しませ、世界の共通語として感動を与えてくれた「マンガ」作りに参加したい、編集者への道を歩みたいと思い立つ。

柔道の経験を生かし、出版社の役員たちに強いインパクトを残す「私」の面接試験、「私」の着眼によるベテランマンガ家の復活、仕事に打ち込めなかったユーレイ営業部員が本を売る喜びに目覚めていく話。
いずれのエピソードも、素直な心と努力の積み重ねが成果を招く、そういう話に見えて、実はテクニカルかつ打算的。いわば「魔球マンガ」のようなもので、そういうワザモノとわきまえて読めばなかなか面白い作品である。

逆に、一つひとつのエピソードを腰を据えて見ていくと、これってけっこう不快…というページもないわけではない。

たとえば「運」についての作者の考え方はかなり気持ち悪いし、編集部員がやたら泣くのもどうかと思う。
人のよいマンガ家の地味な作品を、スタッフや書店と一体となってベストセラーに仕立て上げる営業課長のセリフは、「仕掛けるぞ」であったり、「『売れた』んじゃない。俺たちが──売ったんだよ!!!」だったりする。たまたまその作品が、読めば誰もが涙する佳作、一人でも多くの人に読んでほしい良作、という設定だから感動的に見えるだけで、もし話題性優先のタレント本やダイエット本ならどうだろう。誰かを傷つけることで平積みになる本だったらどうか。

つまりはマンガ出版とはいえ仕事の一種であり、この作品はその仕事をテーマにしたファンタジーである。それ以上でも、それ以下でもない。

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