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2013/02/12

イミフ 『艶やかな女』『玲瓏館健在なりや』 冨明 仁 / エンターブレイン BEAM COMIX

Tuyayaka『艶やかな女』、ジャケ買い。
……で、いささか途方に暮れた。

表紙カバーだけリキ入って本ページはさっぱり、ならまだわかる。
描画は各ページ、それなりに細密かつ美麗なのだ。
ところが何が描きたかったのか、わからない。そもそも、そんなものないのか。

たとえば巻頭の「ワンツーマンゴー」。(あらすじを紹介するのも馬鹿馬鹿しいが)ヒロインはお付きの女の子たち「MCR13」(ムッチリーニサーティーン)の面々とキスをするたび強くなる仮面の少女ユキノ。ユキノとキスを交して立っていられた者はいない。そこに現れた最強、最狂の男、門間国臣。国臣がユキノを倒してキスを交すと、今度は世界中が(トラや幼女、老人まで!)彼とのキスを求めて迫ってくる。キス、キス、キス、キス。あげくユキノのもとに急ごうと、宙を走り、怪鳥と闘う国臣。

これは、ファンタジーなのかギャグなのかエロなのか。
ジャンルを特定することに大した意味はない? そのとおり。問題は、ファンタジーのように夢見ることも、ギャグに笑うことも、エロにおっ勃つこともできない、そのことだ。これは丁寧だがデッサン、訓練なのである。
訓練でもかわいい、訓練でもエロい、訓練でも爽快、そう評価する読み手もいるだろう。だが作者から読み手に渡されるものはない。

他の収録作も概ね同様。しょせんデッサンなのに、作品(タブロー)ばりにとことん描き込まれ、塗りたくられ、額縁に入れられた、そんな違和感。

Reirou冨明仁には『玲瓏館健在なりや』(全2巻)という作品もあるが、そちらも似た手応え。
むしろ、一見連載作品として成立しているだけに、いっそう空疎な印象が強い。

古い西洋館に集う奇妙な下宿人たちと美貌の管理人──どこかで見た設定だが、『玲瓏館』はギャグにもロマンスにもエロにも集約せず、ただ無闇に大仰なエピソード群のはてに突如感動的なフィナーレにいたる。最終回だけみるとどれほど素晴らしい作品だったかと思われるのだが、そこにいたるエピソードがまるで下準備になっていない。描き手にモラルとでもいうか、「筋」が抜けているため、一途な思いも下着姿に眩む目も出合い頭のキスも区別がつかない。
そもそも、美麗な管理人がトラック事故にグリングリンと宙を舞うとか、下宿人の料理があまりに美味で全員が宙を跳んで記憶をなくす、など、テンションばかり高くてテンデバラバラなエピソードにいったい何の意味があるのか。

掲載先である雑誌「Fellows!」は、新人作家に時間の猶予を与えてじっくり描き込ませる編集方針から、一部では「真のマンガ好きに捧げる本格コミック誌!」との評価を得ているらしい。
しかし、冨明や『乱と灰色の世界』の入江亜季らの掲載作に共通する徒労感ははかりしれない。
何が足りないのだろう。
芯のないロウソク。エンジンのないフェラーリ。

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