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2012/12/02

暗い熾火 『小沢さとる未収録短編集 トランキッド』 小沢さとる / パンローリング社マンガショップシリーズ

Photo 青年誌ならともかく、少年サンデーの増刊や冒険王に、何だろうこの寂寥感、無常感。

 『トランキッド』は小沢さとるの単行本未収録短編集。得意の海洋SFのほか、SFスパイアクション、戦記、カーレースもの等、60年代後半に発表された9編が収録されている。

 驚くべきは、いずれの作品も濃密な死の影に覆われていること。両親の死、仲間の死、仇敵の死。主人公自身も無造作に、だが無念の中に死んでいく。

 小沢はすっきりした絵柄で潜水艦同士の攻防を描き、同時代の手塚や石森、横山に比べてもスマートでクールな印象が強い。海底に繰り広げられる戦闘はチェスのごとき頭脳戦で、敵艦を撃沈させればパイプくわえて「ふむう」、少年兵の小型潜水艦が行方不明になれば「かわいそうに」、多くの犠牲者を出した海戦の目的も、謎の敵主艦が沈没した時点で「○○が海のもくずと消えたいましるよしもない」で済ませてしまう。

 『トランキッド』の作品群は、そんな小沢が週刊連載では見せずにきた澱のようなものか。作画、ストーリーは当時としても高水準とは言いがたく、巻末のカーレースもの2作にいたっては展開の無茶、無理押しに息が詰まる。だが、ここでの(永島さえ想起させる)朴訥さ、執拗さは、まさしく当時のマンガにこもっていた熱そのものであり、その火は今も息さえ吹きかければ暗く燃え立つに違いない。
 つまりは、力があるということだ。

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