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2012/11/13

『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』 E・ゴーリー編 梨田元幸 他訳 / 河出文庫

Photo 怪談は夏のもの、と言われるが、はたしてそうか。
 晩秋から冬の初めにかけ、篠突く雨の音を外に、ぬくぬくと膝掛けなど愛でつつひも解くにふさわしいオールド・ファッションな怪談もある(暖炉と足元にうずくまる猫が揃えばさらに望ましい)。
 独特な線画と奇怪な文体で知られる奇才エドワード・ゴーリーによる怪談撰集『憑かれた鏡』は、そんな夜の供にお誂え向きの1冊だ。

 収録作家はA・ブラックウッド、C・ディケンズ、R・L・スティーヴンスン、B・ストーカー、W・W・ジェイコブズ、W・コリンズ、M・R・ジェイムズら、19世紀イギリスのゴーストストーリーを飾った錚々たる顔ぶれ(「信号手」! 「猿の手」! 「夢の女」!)。つまりはいずれどこかのアンソロジーで見かけたような作品群であり、およそ新鮮味を期待するのは無理というものだが、その代わり昨今の(神経に直に薬物を打ち込むような)エキセントリックな刺をまとった「実録怪談」に比べればモノクロームの映画にも似た古色蒼然たる様式美の真黒い影が立ち上がり、それはそれで楽しく、読みがいがある。古典の銀は遅効性なのだ。

Photo_2 ところで、本書巻末の解説でも触れられているとおり、このアンソロジーを選別し、各作品に添えるペン画を描いた折のゴーリーを描いた作品がトーベ・ヤンソンの短編集『黒と白』(冨原眞弓 編・訳、ちくま文庫)に収められている。「黒と白──エドワード・ゴーリーにささぐ」がそれで、『憑かれた鏡』に収録された怪談よりよほど現代的で、世界がぐにゃりと熔けてしまうような嫌な感じに満ちている。あのムーミンの作者もまた、黒い鏡に憑かれた作家ではあったのか。

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