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2012/09/16

背中のブランコ 『残穢』 小野不由美 / 新潮社

 残る穢(けが)れと書いて「ザンエ」と読む。

 「怖すぎて、家に置いとけない」と評した新聞記事があったが、なるほど怖い。とくに前半、しんしんと怪異が少しずつつのっていく物気配はここ十年を振り返ってもあまり記憶にない。
 いわゆる「見える」「霊感がある」わけではないが、読み始めたとたん「ア、コレハイケナイ」スイッチが発動し、読むのは通勤路のカフェに限定、読み終わった本はその駅にそっと捨ててきた。怪異を信じるかどうかはさておき、家に置いておくのは避けたほうがよいような気がしたのだ(もっとも、二度三度読み返すたびに新しい発見が得られる類の書物ではない、という計算がなかったわけでもない)。

 いずれにせよ、本書(と同時に発行された『鬼談百景』の組み合わせ)は、最近ややダレ気味の「実録怪談」に新しいシステムを投入した、といってよいのではないか。
 ストーリーそのものは必ずしも仰天するようなものではない。貞子のような新しいホラーヒロインが登場するわけでもない。小野不由美本人と思われるホラー作家宛てに住人の居つかないマンションについての便りが届く。畳を掃くような音。映像に残った赤ん坊の顔。床下をうろつく気配。移転していった住人に起こる悲劇。怪異は特定の部屋だけで起こるわけではない。マンションとその周辺の土地に何かあったのか? 仕事の合間を縫っての丹念な調査の結果、見えてきた全貌は……。

 「全貌」にあたるものが表題なのだが、そこまで進むと話が大きくなり、妙に理屈が通りすぎて、かえって緩む面もある。やはり前半、説明のつかない怪異の薄く広がるさまがすさまじい。実際、本を捨ててつながりを断ったはずの今も、誰もいない二階でドアの閉まる音がする。閉じたはずの押入れは天袋と同じ幅だけ隙間が開き、庭の虫は窓のあたりだけ急に静まり返る。廊下のスリッパは向きがさかさになり、切ったはずのテレビから低い男の声が。
 などと茶化したことを書いてはいけないのかもしれない。なぜな、この家

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