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2012年8月の5件の記事

2012/08/26

涼しい目薄い唇の3倍速 『ザッドランナー(3)』 カサハラテツロー / 新潮社 BUNCH COMICS

Photo「『ザッド』はモビルスーツを用いた競技」「街中を走る登る」
「スピードとアクロバットポイントを競う」「駆る、駆り、駆れ」
「ボルトまっつぁお」「内村すごすご」
「競技は2台で1チーム」「パートナーと息合わせ」
「フォワードとバックが入れ替わってもいい」「かまわない」
「ウォールランは一歩踏み込んで弧を描く」「クギ付け」
「そのパートナーに組長の娘を誘ってしまった主人公」「野獣娘の目が涼しい」
「最新3巻はともかく展開が速い」「速い」
「小梅に危うく、小梅が危うく、小梅と危うく」「盛りだくさん」
「191ページの粗筋を絵コンテにしたら」「倍じゃきかない、3倍でも」
「通常の3倍」「速い」
「そのくせ主人公と母親のカレーの食べ方を丁寧に描いたり」「まぜる」
「主人公の弱点とその克服が描かれたり」「リミッタ、オフ」
「大会は2回戦でもう宿敵との対決、まさか最終回近いか」「心配」
「でも次巻予告に強化合宿の絵」「これ合宿の絵か。これ合宿の絵なのか」
「その4巻は」「2013年冬発売予定」
「え」「2013年冬発売予定」

2012/08/20

みんなで黒い甲子園 『砂の栄冠(9)』 三田紀房 / 講談社ヤンマガKC

Photo 甲子園は今日でベスト8が出そろった。好投手が多くてホームランが多いという、テレビ桟敷で見ているぶんには実に楽しい大会である。その高校野球といえば、『グラゼニ』最新刊の(6)に折り込まれた『砂の栄冠』のチラシが爆笑ものだった。

 曰く「今、もっとも黒い高校野球漫画」
 「野球漫画史上もっとも腹黒い主人公が暗躍する!」

 キャラクター紹介も「黒いエース・七嶋」はじめ、
 「黒い正捕手・ゴン」
 「黒い野球部長・小沢」
 「黒い女子マネ・遠藤欄」
 「ダメダメ監督・ガーソ」
 「黒いおかあさん」
 「甲子園のベンチで黒いみんな」

 みんな「黒い」のになんで監督だけ「ダメダメ」なんだ。「黒いおかあさん」怖いぞ。

 とはいえ、実のところ『砂の栄冠』の登場人物たちはそれほどダーティというわけではない。
 エース七嶋はじめ、ときどき打算的になったり、秘密をかかえたりする程度で、誰もがいたって純朴な野球好きにすぎない。
 それがなぜ「黒い」とまで言われなければならないかといえば、勝利のために手段を選ばないのはスポーツマンシップにもとる、というジュラ紀以来の教条ゆえである。しかし、大きな目的があるなら手段にこだわるほうがおかしい。本気で甲子園で勝利したいなら、最短、最大効率を目論み、出来ることは何でも手配しておくのが道理だろう。また、これまで高校野球マンガに集金とその使途という要素が描かれなかったのがそもそもどうかしていたのだ。机叩いて「なんでもありや!」バンバンである。

 なので、『砂の栄冠』はごく普通に主人公たちが勝ち上がる野球マンガとして面白い。そもそも野球マンガたるもの、敵味方の「権謀術数」こそ見ものなのだ。そうでなければ数的優位、身体的優位なチームが勝つだけだろう。

 そんな『砂の栄冠』だが、9巻では七嶋たちの甲子園緒戦に決着がつく。
 この1冊で一番トリップできたのは、9回裏2アウト、1点リードされて主人公がバッターボックスに入った場面、主人公が初球狙いでいることに気づいた相手チーム監督が画面奥でスーパーマンのように空を飛び、バックスクリーンの大時計に足をふんばって必死で時間を止めようとする、その2コマ。
 作者がときどき見せる、この、直接的にもほどがある比喩表現。ダサダサな煮っころがしテイストが胃の腑でシュールに醗酵して、ほんとたまりません。

2012/08/16

鈍感さが招き寄せる 『痺れる』 沼田まほかる / 光文社文庫

Photo 沼田まほかるの文庫新刊『痺れる』は短編集。いわゆる「奇妙な味」の、不思議に怖い(たまにエロい)話が並んでいる。

 だが、これだけ数が並ぶと、その創作技法の一端もうかがえようというものだ。
 本書に連なる作品では、いずれも主人公の女性が少し、いーや相当に、「鈍感!」なのである。いかにもの危険な兆候に、隠された相手の思いに、さらには己の思いにまで鈍感なため、普通ならなんということなしに終わるトラブルがどんどん抜き差しならない深みにはまり、やがて大小のクライシスにいたる。
 いくつかの作品で、彼女たちの鈍感さの背景には離婚や不倫などの説明があり、もしかすると作者はそれを「心が痺れた」状態として表題を付けたのかもしれない。しかし、そんな散文的な説明などなしでも、鈍感な女たちの暗転は十分に薄ら寒い。

 もう一つ、本書の気味悪さを彩るのが、いくつかの作品に登場する小さな虫たちである。硬く乾いたヤモリ、ポトリと落ちてくる沼毛虫(う)、半分溶けかけた黒いナメクジ(うう)。
 虫でこそないが、「普通じゃない」の主人公が何度も口にする「そうですよぉ」という相槌も実に気色気悪い。うっかり踏んでしまった虫のようだ。この主人公は他の作品の登場人物以上に鈍感!で、奇天烈な結末がいっそ爽快だ。

 それにしても、「まほかる」という意味不明なペンネームの破壊力は凄い。
 解説の文芸評論家 池上冬樹氏も、「まほかるは不安定な関係の心地よさを描きつつ」「さすがにまほかる、読者の鼻面をひきまわしていく」「まほかるらしい静かで不気味で温かな」「まほかるのことだから普通の不倫ものには」とファーストネームを連呼連発しているが、いくら作家としては新人でも、年長の女性つかまえて、どこか普通じゃない。さては沼毛虫に入られたか。

2012/08/06

沈黙の技術 『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』 ジョー・マーチャント、木村博江[訳] / 文春文庫

Photo 解き明かされた謎を書いてしまうわけには、という縛りもあって、紹介の仕方を迷っているうちにかれこれ半年以上経ってしまった。
 しかし、取り上げないですますには惜しい本なので、以下、つまらない紹介文ですがご容赦ください。

 ──1901年、ギリシア、アンティキテラ島近海の沈没船からその木箱は引き揚げられた。同時に発見された数々のブロンズの彫像に比べ、その木箱の重要性は数十年にわたって誰からも顧みられなかった。なぜなら、そんなものは紀元前1世紀に存在するはずはなかったからだ。

 〝アンティキテラの機械〟と呼ばれるその木箱では、数十個の歯車が精密に組み合わされ、表、裏の表示板の細かい文字と連動している。朽ちた文字の解読や錆びた歯車の解析は困難を極め、何人もの学者がその使用目的の謎に挑戦しては挫折していった。なかには正解のごく近くまで肉薄した学者もいたが、あるいは資金切れ、あるいは時間切れ(亡くなったのだ)で歴史の底流に沈んでいった。

 現在、ハイテクを駆使して解き明かされたこの機械の用途を「コンピュータ」と呼ぶのには(汎用性に欠ける点で)少し抵抗があるが、それでもその複雑さ、精妙さは驚嘆に値する。

 本書は、歯車の働きなど、流して読むだけでは理解が難しいページもあるが、〝アンティキテラの機械〟の発見から冷遇された時期、学者たちが競ってその謎に挑戦し、挫折していった経緯など、スリリングな知的エンターテインメントとなっている。実はこれ、サスペンス映画の原作のために書かれたフィクションですよと告げられても納得してしまいそうだ。

 しかし……用途の謎は解けても、これほどの精密機器について、前後に試作品、類似品の出土物がないことへの説明はいまだついていない。いつ、どこで、誰が考案し、誰が作ったのか。
 〝アンティキテラの機械〟の謎は、まだ何一つ解けていない、とも思う。

2012/08/04

銭闘!100万円 『グラゼニ(6)』 原作 森高夕次、漫画 アダチケイジ / 講談社モーニングKC

Photo プロ野球マンガなのに、勝ち負けを描いたエピソードがさっぱり面白くない。

 フォーカスがあたるのは、マウンドでの凡田の独り言や、練習中の会話に現れる各選手の「待遇」、その読みだ。
 「格」ではない。「格」より「扱い」、いっそ「仕打ち」に近い。本質的でなく、生活直結。
 プロ野球では、この「待遇」が「年俸」に如実に表れる。目端の利く凡田が反応し、縛られるのがこの「待遇」のランキングだ。

 試合のないシーズンオフ、定食屋のユキちゃんも登場しないこの1冊は、そんなグラゼニテイスト満載。契約更改、引退後の転職、結婚。どの「待遇」話もキレのいいスライダーのようだ。

 そんなふうに野球選手のサイドストーリーに引っ張るだけ引っ張っておいて、突然見開きで

   やんだろーよ
   それでも……
   あの人は!

    それが
    〝野球人〟
    ってモン
    でしょ

 ──ほんと、巧いよなぁ!

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