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2012/03/21

事件だよワトスン君 『シャーロッキアン!』(現在2巻まで) 池田邦彦 / 双葉社アクションコミックス

Photo かたやルパン登場とあらば、こなたホームズが出陣しないわけにはいくまい。

 『シャーロッキアン!』は、言わずと知れた名探偵シャーロック・ホームズを主題にした作品である。
 しかも、ただホームズが活躍する原典をマンガで再現するわけではない。ホームズとワトスンを主人公に、新たな事件を描くわけでもない。ホームズの熱烈なファンで、かの探偵を実在の人物とみなしてさまざまな研究を愉しむ者を「シャーロキアン」と呼ぶのだが、本作はなんとそのホームズおたっきーたるシャーロキアンたちを主人公に、ホームズ作品に散見する謎や矛盾点、未発表作品を、大学内や下町、病院、老人ホーム等で起こる事件とからめ、そのうえ登場人物たちの人間関係、つまり友情や恋愛を描き上げるという、それはそれはものすごい力作なのだった。

 その複雑精妙かつ豪胆な作業が、『カレチ』の池田邦彦の、不器用かつひなびたタッチでなされるのがまた憎い。人生の重く悲しい真実を、女子大生・原田愛里と大学教授・車路久(それぞれアイリーン・アドラーとシャーロックのもじりだろう)のコンビがホームズ作品の知識を駆使して推理し、解決していくわけだが、愛里のぽってりした顔が思いっ切り驚き、笑い、泣く、そのどアップがロンドンの霧の夜に展開されるホームズ作品のシックで頑迷な雰囲気を覆して圧巻だ。←素直に「可愛い」と書きなさい

 最近のモーニングによると、作者はいったん仕上げたネームを納得できるまで何度でもやり直すとのこと。『シャーロッキアン!』においても、人物の立ち位置、顔の向く方向、その表情など、素晴らしく説得力のあるコマが少なくない(ほんの数コマしか登場しない教授の亡き妻の存在感がすごい)。また、1巻の人情味あふれるパスティーシュ風味から、2巻にいたっては主人公の恋の悩みを描いて、昭和の香り漂う堂々の一大恋愛ドラマと化した。

 地味だし、絵柄やテーマに好みは分かれるかもしれないが、ここ数年のコミック作品の一つの到達点ではないかと思う。
 
 
 
P.S. 新刊の『シャーロッキアン!』2巻と『カレチ』3巻には、それぞれ池田邦彦の描いた互いを周旋するペーパーが折り込まれている。最近は版元を越えたこういったキャンペーンも少なくない。頑張れ出版業界!

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