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2012/02/08

速度の恩寵 『瞬きのソーニャ』(1巻) 弓月 光 / 集英社ヤングジャンプ・コミックス

Photo 驚いた。
 知らなかった。
 弓月光に、こんなシリアスアクションを描く膂力があったとは。

   引き金引いて
   撃針が雷管
   叩くまでは
   20cmくらいは
   動ける
   だからわたし
   銃は嫌い
   遅いから

 このようなセリフが違和感ない弓月作品など、誰が想定できただろう。

 ベルリンの壁崩壊前、ソビエト連邦の研究施設で遺伝子操作によって生み出されたソーニャ。彼女は外見こそ5~6歳の子供だが体重は約50kg、ヒトの数十倍の反応速度を持つ。父と慕うソ連の老兵ザイツェフや中国の武術家たちから格闘術やサバイバルを学び、やがてソーニャは無敵の人間兵器と化していく。逃げ延び、生きるために。

 単行本1冊を通じて、弓月らしいお色気ギャグは1コマもない。全ページ、戦闘と、ソーニャのために巻添えになる人々の死が描かれるだけ。残虐を越えてスプラッタな戦闘シーンには悲鳴以外にセリフもなく、展開は緊密、読み手は常に緊張を強いられる。

 ただ、ベテランがゆえに、作画には若干の難点が残る。
 古いタイプの漫画家である弓月の効果線や手書きの音喩(「バキン」「ガコンッ」「ばーっ」「ぐざんっ」など)は作品の重さ、冷たさと噛み合わない。それ以上に、意図的なものなのか、ソーニャはともかくザイツェフら通常の大人まで五等身かせいぜい六等身の頭でっかち、味方はまだしも冷酷な敵までいずれも柔和な童顔で描かれるのだ。もっとも、もし、この作品がこれ以上にリアルなタッチで描かれていたなら、もはやマンガの領域ではない。

 3年がかりで単行本1冊。年2話ずつ掲載されてきた雑誌(ビジネスジャンプ)はすでに休刊となった。
 結末までの道のりは遠そうだが(ソーニャは1998年の生存まで確認されている)、待つ価値、祈る意味はある。

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