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2012/02/06

探偵は少し上から目線 『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』『ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~』 三上 延 / メディアワークス文庫

Photo 北鎌倉のさびれた古書店を舞台に、店主の若い女性が古書の持ち主の謎を静かに解き明かす……本書のそんなストーリーは、おそらくタイトルや表紙から想像されるものとそう外れない。
 それが、「本の雑誌が選ぶ2011年度文庫ベスト10 第1位」「2012年本屋大賞ノミネート」のお墨付きを得て、街の書店各店でこれでもかこれでどうよの面陳・平積み一発ドラドラ、あっという間のミリオンセラー達成、本の売れない時代に本そのものを扱った作品が売れたのだからけっこうなことだ。

 ミステリとしてはややヌルめかもしれないが、伏線を放置するような粗末なレベルではない。第1巻第三話など、キャラクターの妙もあって心地よく楽しめた。しかし、殺人の起こらないのほほん癒し系などとあなどっていると、思いがけず苦い枠組みを嘗めるハメに陥るかもしれないので注意。

 一つ、ストーリーとは別に、本を読まない、本を知らない者をつい見下してしまう、いわゆる「上から目線」な物言いがいくつかあって、その小骨がどうにも気になった。この目線は『金魚屋古書店』(芳崎せいむ)や『草子ブックガイド』(玉川重機)などにも共通する。

 このシリーズの各篇は実在する古書をサブタイトルとしているのだが、第1巻ではそのラインナップが
   夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
   小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
   ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
   太宰治『晩年』(砂子屋書房)
つまりは説教臭い。「上から目線」の正体はこの説教臭さにある。
 本の内容が優れていることと、本を沢山読んでいることの間には実はあまり関係がない。ましてや「完本蔦葛木曽桟」を読めるかどうかなど、どれほどのことでもない。本を読むということはよくも悪しくも身勝手なものだし、本など読まずに豊かに生きられるならそれはそれでけっこうなことだ。

 そも、作品が本当に読むべきものなら、初版、復刻版、文庫、全集を問わず手にして読めばよい。ナイフも入っていないフランス綴じの初版で美本で高額な古書に目を輝かせる輩共に読書や人生を云々されなければならない覚えはない。

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