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2011/10/23

B級ルポが噛みつくと痛い、かもしれない 『ミッキーマウスはなぜ消されたか 核兵器からタイタニックまで封印された10のエピソード』 安藤健二 / 河出文庫

Photo_5 1980年代には、もう、ディズニーが著作権にうるさいという印象があった。仕事でディズニーがらみのサウンド作品(今でいうコンテンツか)を公開しようとしたところ、許可が得られなかった、という経験もある。ディズニーが許可しなかったのではない。著作権協会やら代理店やらが「難しいので」「本国に聞かないと」を繰り返し、結局許可を与え得る部署、担当者までたどり着けなかったのだ。
 本書で扱われている、「大津の小学校で、卒業生が低学年用プールの底に描いたミッキーマウスの絵が、ディズニーの抗議によって塗りつぶされた」という事件も、当時、話としては聞いた覚えがある。ただ、耳に入ったのはいい加減な噂レベルのもので、「小学校」ではなく「幼稚園のプール」だったし、ディズニーの社員が飛行機で飛んで発見した、という怪しい尾ひれも付いていた。なので、話半分、いや、いわゆる都市伝説の類、とずっと思い込んでいた。まさか、(飛行機を除き)本当だったとは。

 本書は、そのミッキー事件や、タイタニック号から生還した細野晴臣の祖父にまつわる批判と名誉回復に関する眞實(思わず旧字になってしまった)、M君事件におけるウルトラセブンのビデオの流通経路など、10の怪しい噂に単身チャレンジ、その実態に迫ったものである。

 ただし、掲載先にもよるのだろうが、その調査のスタイルははなはだチープ。ディズニーが、ミッキーの絵を塗りつぶしたお詫びに子供たち全員をディズニーランドに招待した、という後日談を確認するため、著者が探り当てた当時の卒業生はたった一人! それ以外のルポも、ただ現地をうろついただけ、(熱心ではあるが)文献をあたっただけ、など、正直にいえば「えっ、これで河出文庫になるの?」レベルのルポもないわけではない。

 だが、これまた正直にいえば、本書は決してつまらない本ではない。
 この数十年、なんとなく「そうなのか?」「そうなんだ」と言われてきた事象や事件について、ふと抱いた疑問を放置せず、とりあえず納得できるまで調べる。リッチとは言い難い著者は、データマンをたくさん使うこともかなわず、締め切りまで、一人の足で、という制限の中、朴訥に歩き、訪ね、尋ね、無視されても呆れられても事件のまわりをうろつきまわる。……いくつかは無駄に終わるだろう。だが、いくつかは、明確な答えが得られない、というグレイの絵の具で塗りつぶされた事実の影が見えてくる。
 その姿は、案外、巨大で醜悪だ。

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