ゴジラ映画の嗣子 『ファントム・ピークス』 北野一光 / 角川文庫
先週日曜の朝日新聞の書評欄に「ホラーかミステリーのように始まって、途中から急激に○○(ネタバレになるので伏せ字)パニック小説になる」とあり、なかなか面白そうなのでさっそく書店で買い求めた。
しかし。しまったあぁ!なことには、書店でパラっとめくった瞬間にその○○がばっちり目に焼きついてしまった。くくうぅ。後悔後の祭り。
とはいえ、○○の正体がわかっていて、なお面白かったのでよしとしよう。今度から気をつけようね。 > をれ
作者北野一光は映画の宣伝プロデュースの仕事をされていたが、40代半ばで癌で亡くなったらしい。惜しいことだ。
淡々とした書き方が「映画のシノプシスを思わせる」とは朝日の書評にもあったことだが、それだけでなく、長野安曇野の山岳地帯を舞台として展開するサスペンス、アクションシーン、穏やかだが根気強い主人公の男と気の強い動物学者の女、わかりやすい伏線などなど、いかにもB級映画向けの要素がバランスよく散りばめられた作品だ(ほめているのである。念のため)。また、姿の見えない凶悪な怪物について、一部の者以外にはなかなかその存在を理解されず、そのため被害がじわじわ広がっていく前半、怪物の正体が明らかになるとともに一気にパニックが広がってスプラッタなシーンが展開する後半、この二段構えの様式は大昔の「ゴジラ」など、正統派怪獣映画そのものだ。主人公と怪物の無理やりな最終対決の荒唐無稽さ、いかにもな「怪物博士」の登場を含め、怪獣映画のスピリットを正しく継ぐものとして高く評価したい。
(追申)
本書『ファントム・ピークス』は、先に紹介した『ハチはなぜ大量死したのか』を読み終えた日に購入し、その日のうちに読んだのだが、『ハチは』でも取り上げられていたニホンミツバチについて「病気やダニに強く、小柄なために様々な花に潜り込んで蜜を集めてくる」といった紹介がなされており、思わずしんくろにしてー!?とつぶやいたことであった。
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