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2011/09/09

『文豪怪談傑作選 幸田露伴集 怪談』 東 雅夫 編 / ちくま文庫

Photo ここ数回実録怪談モノが続いたが、この夏、その手の怪談本ばかり読んでいたかのようにとられる方がおられたなら、それは断固誤解である。タイムシェアリングなオペレーションシステムをもって家のあちこちに読みかけの本を配置し、イベントドリブンでそれをつまみ上げては読む。その中で、風呂場と枕元を行ったり来たりしたのが本書『文豪怪談……』、いやその、えーと。

 東雅夫の怪奇アンソロジーはいつも楽しませていただいているが、少しばかり気になるのが、集め元にやや文士、文豪の類を多く揃えすぎることか。ちくま文庫の『文豪怪談傑作選』はその東嗜好全開、なにしろ皮切りから康成、鴎外である(とはいえ3冊めに吉屋信子をもってきたのにはシビれた)。
 しかし、鏡花、龍之介等々明治、大正期の文豪を連発されると、いかな怪談、妖異譚といえどすらすらとは読めない。誰とは言わないが昨今のベストセラー作家なら2、3時間もあれば読み抜けるボリュームを、1ヶ月、2ヶ月、ヘタすりゃくたびれ果てて読み切れないことも珍しくない。漢字が多い、言葉が難しいということももちろんあるが、そもそも文体の示すメトロノームの値が別なのだ。

 幸田露伴については以前も少しだけ取り上げたことがあるが、本書には初期の「対髑髏」(東によれば近代最初の怪談文芸作品)や漢籍仏典からの引用の頻出するエッセイなど、中短の作品がぎゅうぎゅう多数詰め込まれており、いくつかはまだ読み終えていない。斜め読みなどしようものなら何を読んでいるのかわからなくなること必定。ああしんど。でも楽し。

 それにしても「対髑髏」冒頭、

   我元来洒落という事を知らず、また数寄(すき)と唱うる者にもあらで、ただふらふらと五尺の殻を負う蝸牛(ででむし)の浮れ心止み難く東西南北に這いまわりて、覚束なき角頭(かくとう)の眼に力の及ぶだけの世を見たく、……

これが二十歳そこそこの者に書ける文体だろうか。

 否、さらにすごいのは、後年の豊饒極まりない「観画談」「幻談」に向かうと、その「対髑髏」ですら所詮才走った若書き、いわゆる猪口才な小手先技量にしか見えないことだ。
 「観画談」など貧しい学生が療養のために旅に出た、山に登った、寺があった、激しい雨の害を避けるためさらに高所の草庵に移った、そこには耳の聞こえぬ老僧がおり、一軸の画があった。……妖魔、怪異が跳梁するわけでもないこれだけの話が、もう雨の圧迫感だけでいかにもすさまじい。舟で釣りに出たら溺死者のものとおぼしき釣竿を拾ってしまって、という「幻談」しかり。何度読んでもいい。もはや何がなんだかである。

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