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2011/09/16

ヘアピンラブ 『スマッシュ!』(全18巻) 咲 香里 / 講談社 少年マガジンコミックス

 スポーツマンガの歴史において梶原一騎や水島新司の果たした役割が極めて大きなものだったことは今さら言うまでもない。だが、勝ち負けにこだわった彼らに対し、恋愛などスポーツ以外の要素をふんだんに交えることで、結果的により深く人間とスポーツの在り方を描いた山岸凉子山本鈴美香大矢ちきら女流作家のスポーツマンガは幾度でも再読に耐え、今も独特の輝きを放つ。

Photo_3 ……とはいえ。それにしたって。

お蝶夫人のキラキラ美麗系コラーゲン白湯鍋

岡ひろみのメラメラ美燃系ピリ辛トマト鍋


は凄すぎないか。丸大食品。女子人気をあてこんだとしても、エース(連載は1973~80年)をよく知ってる女性って何歳くらい。アラフォーでも詳しくはご存知ないのでは。
  お蝶夫人「けっきょく… けっきょく冷たくはしきれない」
  ひろみ「お鍋ですもんね」
  コーチ「岡、肉だ。肉をねらえ」

 

 

 

 

 えー、こほん。


Photo_2  そうそう、今回の鍋の具は……じゃなくて、今回の題材は、やはり女流作家、咲香里のバトミントンマンガ『スマッシュ!』。2006年から2010年にかけて少年マガジンで単行本18巻分、打ち切りにもあわずきちんと完結したのだから、評価、人気が低かったとは思えない。さりとて「歴史に残る」「人生の一作」という評判を得ている様子もない。このままブックオフ105円棚に流れるかと思うと惜しい気になったので、せめてここでアピールしておこう、「面白い!」

 主人公 東翔太はバトミントンを始めたばかりの男子高校生。ヒロインの鬼頭優飛は天才肌のプレイヤー。彼女は交通事故で家族を失い、そのショックで声を出せなくなって、会話は常に筆談で行う(矢代まさこの「ピースバードストーリー」も同じような設定だったか)。
 この設定だとどうしてもウェットなストーリーを想像してしまうし、バトミントンの楽しさを知り始めた翔太がアキレス腱を切って試合に出られなくなる初期の展開など、あー、やはりこのまま今泉伸二ふうに次から次へと悲劇が続くのかと思われたものだが、そうはならない。『スマッシュ!』がとことん明るいのは、作品世界が翔太の幼馴染やダブルスのペア、先輩、後輩、ライバルたちを含むある世代のバトミントンプレイヤーたちの群舞として描かれているからで、翔太が怪我から回復した後はノンストップで前向きなドラマが展開されていく。本作が今ひとつインパクトに欠けるのは、主人公やヒロインの絵柄に個性が弱いせいなのだが(主人公が誰だかわからない添付の表紙カバーでもそれは明らか)、その代わり脇役たちのとぼけた言動は実に楽しい。基本的に「皆頑張れ!」と声をかけたくなる作品なのだ。

 興味深いのは、主人公がそこそこ大きな大会で優勝を得るのは、ダブルス、シングルスとも、ようやく最終巻にいたってということだ。優勝はほとんどエピローグ扱いなのである。また、最強のライバルが登場し、主人公が世界に羽ばたく後半にいたって、逆に物語は誰も彼ものラブラブおポンチと化す。ただし、バトミントンにおける勝ち負けが軽視されているわけでもなく、主人公もヒロインもダブルスのペアもライバルも皆勝たねばならないさまざまなプレッシャーにさらされ続けてはいる。それでこの軽さ、軽さの中でのこの凄み。梶原一騎や山本鈴美香よりあだち充に近いが、あだち充よりは格段にスポーツしてる、といったところだろうか。
 まあ、騙されたと思って、未読の方はぜひ。

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