フォト
無料ブログはココログ

« 年棒1800万ってのは全然ダメなんです! 『グラゼニ(1)』 原作 森高夕次、漫画 アダチケイジ / 講談社モーニングKC | トップページ | 夜の海に光る 『虫と歌』 市川春子 / 講談社アフタヌーンKC »

2011/06/12

実は知的パズル? 『カレチ』(現在2巻まで) 池田邦彦 / 講談社モーニングKC

Photo 【まちがってもいい! 車掌弁は迷わず引け!!】

 昭和40年代後半の国鉄、長距離列車を舞台とした、新米「カレチ」荻野憲二の奮闘と成長を描いた作品。「カレチ」とは、長距離列車に乗務する客扱専務車掌を指す、国鉄内部の呼称とのこと。

 「モーニング」に不定期に掲載されてきた読み切り連作(2011年1号からは月1連載)で、当初からパラパラ目を通してはいたのだが、もともと鉄道趣味がないのと(ミステリでも鉄道を扱ったアリバイ崩しは苦手)、それ以上に絵柄がいかにも人情噺ふう、当節の言葉でいえば「クサ」そうだったため、あまり注目していなかった。

 しかし、何作か読むうちに、どうもこれは単なる「お涙頂戴」じゃないのではないかと思えてくる。
 たとえば第1話、主人公は、母親が危篤でと涙ぐむ女性乗客を救うため、厳罰覚悟で規則を破る。この展開は、ただ情に流された主人公が情に敏い第三者に救われたという、とことん人情にまつわる話、と読めてもしかたがない。しかし、この第1話にして、すでに、ある特定の命題に対し、限られた時間内(次の駅まで、など)に、乗客のためにベストを尽くそうという思いと、それを阻む規則や上官の命令という矛盾する条件にいかに正解を導くか、主人公が迷い、判断を下す(ときとして無鉄砲な選択をする)という構図はすでにでき上がっている。
 ミステリに「フーダニット」(誰が犯人か)、「ハウダニット」(どのように行ったか)、「ホワイダニット」(なぜ行ったか)の三要素があるように、『カレチ』では、事件とそれにかかわるルール、問題点まで示した上で、「どうすべきか」の回答が求められる。そういった構造が毎話きっちり守られているのだ。
 もちろん、犯人当てのように明確な白黒がつかないケースも少なくない。荻野の判断は正しかったのか。本当はどうすればよかったのか。それはそれで読後に余韻を残すのだが、それは単なるお涙頂戴の余韻とは異なる、一種知的な快感である。

 ちなみに、昭和40年代後半(1970年代前半)というのは、国鉄労組による順法闘争(スト権スト)が頻発し、その都度ダイヤが乱れ、利用者の「国鉄離れ」が進んだ時期でもあった。
 『カレチ』は古きよき時代の鉄道マンを描いてノスタルジーを感じさせるが、当時の現場はすでにそのような人情だけで通るものではなかったはずだ。今後、『カレチ』がそこまで踏み込むのか、それとも一種のファンタジーで終わるのか。願わくば……いや、正解は、わからない。

« 年棒1800万ってのは全然ダメなんです! 『グラゼニ(1)』 原作 森高夕次、漫画 アダチケイジ / 講談社モーニングKC | トップページ | 夜の海に光る 『虫と歌』 市川春子 / 講談社アフタヌーンKC »

コミック(作品)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547008/51919874

この記事へのトラックバック一覧です: 実は知的パズル? 『カレチ』(現在2巻まで) 池田邦彦 / 講談社モーニングKC:

« 年棒1800万ってのは全然ダメなんです! 『グラゼニ(1)』 原作 森高夕次、漫画 アダチケイジ / 講談社モーニングKC | トップページ | 夜の海に光る 『虫と歌』 市川春子 / 講談社アフタヌーンKC »