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2011/06/06

年棒1800万ってのは全然ダメなんです! 『グラゼニ(1)』 原作 森高夕次、漫画 アダチケイジ / 講談社モーニングKC

Photo【てめーら……… これでまたしばらくは試合に出られるなァ──!】

 この半年あまり不定期に掲載され、野球マンガ好きにほろ苦い笑いを提供していた『グラゼニ』、満を持しての単行本化である。いきなり朝日の書評に取り上げられるなど、幸先は悪くない。スミ1で終わらせるなよ、グラゼニ!

 主人公はプロ野球選手、凡田(ぼんだ)夏之介。高卒でプロ入りし、8年目。左腕でサイドスローという特徴を武器にワンポイントで起用されてはいるが、プロ野球選手の絶頂期と言われる26歳で先発ローテに入れず、年俸1800万という厳しいポジションにいる。
 彼は選手名鑑に載る全球団の1軍選手の年俸をソラで言えるいわば「年俸オタク」であり、自分より年俸の低い選手には見下ろしてキレのあるボールで圧倒、年俸の高い選手には腕が縮こまって打たれてしまう(年俸1億を超えると「天文学的数字」と映るためか、開き直ってそこそこ抑えられるあたり現金)。今夜も凡田は「グラウンドには銭が埋まっている」、グラゼニ、グラゼニと心中つぶやきながらマウンドに向かう。
 この凡田に、引退してラジオの解説で苦戦する同郷の先輩(いい味出してる)、同じく同郷の若手外野手、同期の先発ピッチャー、他球団の球団幹部などからめ、プロ野球の裏表をペーソスを交えて描くシブい作品、それが『グラゼニ』だ。

 年俸1800万レベルのプロ野球選手の私生活が実際はどれほどのものか知らないが、凡田の独白に「引退の翌年── 年収100万円台になった人を僕は何人も知っている!」とあるように、引退後のことまで考えると厳しい世界であることには違いない。作者はそういった金勘定や裏方の厳しさに加え、左のサイドスローが大物選手にデッドボールを当ててしまうなど、かなり野球をよくわかっているようだ。第4話に登場する、3試合続けて味方が1点も取ってくれない先発投手の悲哀など、今シーズンの日ハムの武田勝の先発5試合連続完封負けを予言したかのよう。
 プロ野球ファンというのはこういった細かな記録に興味を持つものだ。それを踏まえて描かれた作品が面白くならないわけはない。

 1つだけ、気になった点。
 原作者の「森高夕次」というのは、梶原一騎が『あしたのジョー』や『ジャイアント台風』を書いたときのペンネーム「高森朝雄」をパクったものだろう。誰だこれ。……調べてみると、「森高夕次」とは、マンガ家のコージィ城倉が原作を担当するときのペンネームとのこと。なるほどー、納得だ。
 コージィ城倉といえば、『愛米』などのヘンなギャグマンガの一方、『砂漠の野球部』(20世紀最後の魔球漫画!)や『おれはキャプテン』など、頭を使わないと勝てない野球、頭だけでは勝てない野球、そんな野球を描いてきた力のある作家である。そんなコージィなら、『グラゼニ』が週刊化されてたとしても簡単にネタに詰まる心配はないだろう。常に予想を覆す展開を見せ続けてくれるに違いない。
 唯一の心配は、コージィ城倉は暴投、途中降板が多いことだが……まあ、それはそれ、鉦や太鼓で応援するのがマンガファンというものだ。

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