『幽明録・遊仙窟 他』 劉 義慶 他作、前野直彬 他訳 / 平凡社 東洋文庫43
連休はだらだらと家にいて、ぱらぱらと手元にある東洋文庫ばかり読んでいる。布張りのハードカバーが手に心地よい。
震災報道にまさる悲惨、原発報道にまさるサスペンスがそうそうあるわけもなく、その反動かとも思う。
晋の元帝のころ、甲という人物がとつぜんの病気で亡くなったが、天の役所で帳簿と照らし合わせてみるとまだ寿命があった。ところが甲は足が痛くて、歩いて帰ることができない。そこでちょうどそのときに死んだ西域人の足と交換して生き返ったが、西域人の足は毛むくじゃらで独特の匂いがする。おまけにその西域人の息子たちに見つかり、しょっちゅう泣きながら足にしがみつかれて閉口した。
『幽明録・遊仙窟 他』にはこのような他愛のない短い話が山ほど詰まっている。
温敬林という人物が、亡くなって一年たってひょいと戻ってきた。その後、酔いつぶれたところをみると、隣の家の年老いた黄色い犬だったのでたたき殺した。
などなど。この話など、短いながら妻が「いっしょに寝た」ともあって丁寧に読めばなかなか気持ちが悪い。
逆に楽しかったのは、昨夜読んだ以下のような話。
上虞県の県令(知事のようなものか)になった劉鋼は道術をもちいてすぐれた統治を行ったが、道術においては妻の樊夫人にかなわなかった。政務のひまなときには夫人と術比べをするが、一つひとつ必ず負けてしまう。のちに仙人になって天に昇る際も、鋼が役所のそばに生えている木の上に数丈もかき登ってようやく飛んでいくことができたのに対し、夫人はすわったまま雲気のようにゆるゆると昇っていった。
こういった話は孔子の弟子には「怪力乱神を語らず」といさめられ、また天下国家と関係ない「小説」とさげすまれ、さほど重要ではないものとされてきたようだ。
だが、本当にそうか。
それからまもなく妻は病気になって死んだ。それっきり幽霊も姿を現さなくなった。
それから三十年たつと、はたして王は死んだ。
それから数日後、巣の屋敷は全焼した。
徐はくよくよとふさぎこんだきり、死んでしまった。
それからまもなく、ふいに夫婦もろとも死んでしまった。
その後、娘たちは次つぎに死んでいった。
夫人が抱きしめようとすると、たちまち箒になってしまった。そこで焼き捨てた。
勧善懲悪さえ成しとげられたかどうか怪しいこのような終わり方こそ、あさましくも尊い人のありさまではないか。
のちの、人間や社会を描いたとされる文芸のわざとらしさが今は少し煩わしい。
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