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2011/04/11

力だけでは足りない 『鉄腕バーディー』(全20巻) ゆうきまさみ / ヤングサンデーコミックス

Photo  震災から1か月経つ。
 3月11日より前に読みかけていた作家について、意識というか糸のようなものが切れてしまって、うまくつながらない。

 棚からすべり落ちた本を片づけるついでに、読み返しそうにない本を段ボール箱に詰めていったらどんどんいっぱいになって、箱や手提げ袋のほうが足りなくなってしまった。キリがないのでとりあえず古本屋を呼んで引き取ってもらったが、つまりはそんな程度の読書しかしてないということだ。

 『鉄腕バーディー』は震災のしばらく前に20巻そろえて「さあ!」とばかりに読んでいたのだが、これも売りとばした。評価しないからではありませんよ。濃密な、よくできたSF作品だと思っています。
 ただ、この作品は、無敵の肉体を誇る連邦捜査官バーディーを主人公としながら、意図的としか言いようのないほど爽快感がない。ともかく、作者が、主人公自身が、さらには敵ならまだしも味方さえ、主人公バーディーにあらゆる制限、縛りを加え、悶々とした展開が続いて「鉄腕」の枕詞が泣く。バーディーがその超絶的な攻撃力をもって叩きのめすことに成功したのは、敵の内でも巨大なだけのロボットだったり、せいぜい暴走した小物の悪漢ばかりで、20巻中、大物といえるのは1人だけ(しかもその敵を殺したことについて、バーディーはしばらくくよくよと思い悩む)。

 ゆうきまさみの作品では、舞台や設定はさまざまでも、細部のリアリティへの奇妙なまでのこだわりがうかがえる。食事シーンや高校の放課後など描いても、シーンごとに細かい設定や小道具を変え(食事時のシャモジの扱い1つみてもしびれる)、出来合いの「よくある小道具」ですませない。
 これは、ゆうきまさみの作品を読む楽しみであり、氏の長編を読み始めると軽い中毒症状に陥る要因でもあるのだが、『鉄腕バーディー』のように鬱屈した作品ではこの細部へのこだわりは読み手をきしませる。

 ……というようなことを書こうとしていたところに、震災である。
 ほかにもいろいろ書きたいことがあったはずだが、忘れてしまった。

 バーディーがいてくれれば、水素爆発を起こした建屋に水をかけるくらい瑣事だったろうに、と思う一方、バーディーにまかせたら炉心をひっくり返してプルトニウムをまき散らすくらいやりかねない、とも思う。
 そんな、マンガ的な世界が、福島の海岸ではまだ続いているという日常。

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