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2011/01/09

『キャンディとチョコボンボン』(大矢ちき/小学館文庫)より「雪割草」

Photo 【あたし あなたが だれなのか わかる気が するわ】

 少女マンガ研究者必読の書『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』において、橋本治は大矢ちきを「世界を変えた唇」というサブタイトルで取り上げている。いわく「顔には唇という名の内臓粘膜が露出している──そうしたリアルな現状認識に立つのが大矢ちきである」。

 この事実を発見した橋本治も偉いが、そのように作品を描いた大矢ちきも凄い。
 なにしろ彼女が活躍したのは主に70年代前半のほんの数年間、それも、掲載先はあの夢見る乙女ちっく、「りぼん」である。その誌上で、大矢ちきは、大きな星目、夢見がちな少女を主人公にいかにもの少女マンガを描きながら、のちのやおい同人誌ブームの先がけとなる長髪、鷲鼻、冷たい目、長く細い指のデカダン美青年をはじめて産み出したのだった。

 それだけではない。大矢ちきが冷たい楔のように少女マンガの歴史に残した作品がある。
 それが今回紹介する「雪割草」だ。「雪割草」だ。「雪割草」だ。(エコー)

 この中編については、これまで何度話題にしようとしてきたかわからない。川原泉の30回は泣ける怪作『銀のロマンティック…わはは』のパロディ元であることから書き起こすことも考えた。『アラベスク』や『エース』との関連から解くことも検討した。だが、言葉をつくそうとすればするほど「雪割草」から離れてしまう。

 「雪割草」は現在、小学館文庫『キャンディとチョコボンボン』で読むことができる。どうか手に取り、読んでいただきたい。文庫サイズであり、また表紙がモノクロなのが残念だが、それでも、他のあらゆるマンガ作品との違いは読み取っていただけるのではないか。

 テーマはフィギュアスケート、と、死。
 フランス心理映画のような人物描写、無駄を排したセリフ。そしてラスト数ページにおいて、読み手は氷上にベートーベンの「悲愴」とエッジングの音を聞く。

 ペンタッチが硬質な作品ならほかにいくつかあるかもしれない。しかし、あらゆるコマが磨き上げた大理石でできた作品は「雪割草」だけだ。

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コミック(作品)」カテゴリの記事

コメント

こやまさんお久しぶりっ。
ちなみに烏は、かつてその「ぴあパノラマ館」に当たったことがあります。当選はがきを持って(ぴあはプレゼント当選者に「取りにらっしゃい」という雑誌でした)猿楽町のビルを訪れると、エレベータも見当たらない(ぜいぜい)4階の受付のおねーさんは「うーん、MかなLかな」とプレゼントのトレーナーのビニール袋をバリバリと破り、「はいはいっ」と烏の上着を脱がせ、「ほらほら」とトレーナーを着せ、その場で「くるっと回ってみて。うん、Lでいいね。おめでとー」と言ってくれたのでした。
薄い黄色地に、大矢ちき描くモンローがスカートをおさえた柄のオリジナルトレーナー。嬉しかったなー。

あけましておめでとうございます。(遅っ)
今年は年賀状を出し損ね、寒中見舞いが忘れた頃に行くかと思います。

ところで、大矢ちきさんの新刊が来月復刊ドットコムから出ますよ〜
http://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68314634

私は、大矢さんというとマンガではなくて、ぴあに連載されていた緻密なパズルを描いた人という印象が・・・。

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