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2010/11/13

電子書籍について気になるいくつかのこと その四

 既存の出版社にとって、この「本が売れない」時代に、電子書籍は再浮上のきっかけとなるかもしれない。インターネットやケータイメールに没頭する若者たちを、もう一度「本」の世界に引き戻せるかもしれないから。

 残念ながら、それはおそらく、かなりの確率で甘い夢のまま終わることだろう。

 リアルの世界において、無名の素人が自分の「本」を売るのは、つまり「作家」になるのは、なかなかに難しい。まず、既存の出版社のいずれかに「売り物になること」を認められ、本を発行していただかねばならない。金をつんで自費出版する手もなくはないが、よしんば1000部10000部製本したところで、出版社からトーハン、日販などの出版取次への流通に乗せられなければ、全国の書店に本を送り込むのはまず不可能。ちなみに大手取次の資本出資者は老舗の大手出版社である。出版の世界は外から見える以上に閉じているのだ。

 では、電子書籍についてはどうだろうか。
 オンラインで電子書籍を発行する際、「本」の置き場所は「書店」サイトである必要はない。極端な話、ホームページにPDFファイルをアップすればよいのであり、今現在だって誰にでもできていることである。素人の手に負えないのは「課金システム」だ。1冊50円、100円で、と思っても、その50円、100円を受け取るのが非常に難しい。
 逆にいえば、AppleやGoogle、Amazon、Yahoo!のようにネットに特化した企業が自社の課金システムを提供したなら、「本を売る」ことは誰にでもできるということになる。ちなみに、パソコン用のソフトウェア(プログラム、データ)の世界ではこのモデルはすでに出来上がっており、アマチュアからプロまで、有料・無料の(←これが素晴らしい)膨大なソフトウェアがWeb上のサイトから配布されている。

 もし、オンラインで電子書籍の発行、販売にサーバーを開放し、課金システムを提供するサービスがあったなら、おそらく作家としてデビューするところ「まで」は誰にでも可能となるだろう。書き上げた文章を電子書籍の形式に変更するアプリケーションは今後いくらでも出てくるだろうし、個人やその制作物をそれなりの規模で宣伝するのはインターネットの得意技の一つでもある。なにより、間に出版社や出版取次のマージンがないこと、通常の出版物のように返本のリスクがないこと(これはものすごいことだ)、それらを想像しただけでもハードルはとんでもなく低い。
 電子書籍発行サイト側にしても、利益はバナー広告で得るか、あるいはその書籍のアップロード時に一種の入会金を取るか、あるいは電子書籍の売り上げにほんの数%をかければよいのだから、玉石混交でも書籍数を増やすことは客集めの材料にこそなれ、デメリットにはならない。あとは、話題作が口コミで広がるのを待ち、ベストセラーがいくつか育ったら、サイトのトップでがんがんうたえばよい。こういった電子書籍サイトは、しばらくは乱立して過当競争を招くだろうが、その大半はネット上のビジネスサイトがそのノウハウやツールを電子書籍発行に流用するだけで、要するに本業さえしっかりしていれば電子書籍販売だけで社員全員の稼ぎを叩き出す必要はない。

 既存の大手出版社は、はたしてこういった電子書籍発行サイトが乱立する時代に対抗しうる、ネット上のノウハウを持っているだろうか。おそらく、持ってないだろう。ここでいうノウハウは、よりよいコンテンツを制作するノウハウとはまったく別モノなのだ。

 レコードがCDにとってかわっても、レコード会社は(その業界内部での競争、再編はあったにせよ)同じ業態で存続し得た。これは、ミュージシャンの囲い込みが重要であることにおいて、レコードもCDも変わらなかったためだと思われる。しかし、「本」から電子書籍への移行については、同じことは起こらない。作家の囲い込みは困難だからだ。おそらく、もし早い時期に、既存の出版社以外の発行サイトから、無名の新人の電子書籍がブレークしたりすると、現在の大手出版社は一気に苦戦を強いられるようになるに違いない。その可能性は、非常に高い。

 もちろん、既存の出版社には、膨大かつ上質な書籍資産がある。だが、それらをオンラインで再販するには、さまざまな権利問題や、高い印税が障壁となるに違いない。また、出版社のかかえる社員、スタッフの人件費も半端ではない。ほんの数人の技術スタッフだけで、とりあえず相当大きなビジネスモデルを起業できる(カスタマーサポートや営業などは規模に合わせて外注すればよいのだ)ネットの世界で生き残るには、手も足も自分で食べさせなければならない既存の出版社など、すでに巨大すぎる恐竜なのだ。

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