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2010/11/08

電子書籍について気になるいくつかのこと その一

 考えがまとまっているわけではないので、メモ代わりにとりあえず書き散らしておくことにする。

 少し前に取り上げた内田 樹『街場のメディア論』では、「本棚」は読書家にとってある種「理想我」であり、そこには単に自分が読んだ本、読むつもりの本が並ぶだけでなく、それらを読んだ自分、今後それらを読むはずの自分の「あるべき姿」あるいは「そう見られたい姿」が如実に顕れること、そして来るべく電子書籍の時代には、そのような「本棚」の機能が喪われてしまうであろうということが指摘された。
 なるほどこれはご指摘のとおりで、たとえばLPレコードのコレクター、CDのコレクターの棚にも「理想我」は色濃く顕れる。たとえばときにはクラシックも聴くハイソでインテリな私、たまにはジャズも聴くセンスのよい俺、など、良くも悪しくも一種の「演出」、平たくいえば我をもあざむく「見栄」がこもっているものだ。ちょっと意地悪く書いてしまったがそれは必ずしも悪いことではない。人は自分のありたい姿をめがけて成長するのだから。
 しかし、iPodやWalkmanなどの携帯プレイヤーが普及すると、その日そのときに聴きたい曲さえ持ち運べればよい、そういったリスナーが主流となる。そこに「理想我」の出る幕はない(ところで、音楽配信がネットからのダウンロード中心に移行してしまうと、ミュージシャンが意図したアルバムの曲順や長尺の交響曲などの配信はどうなってしまうのだろう。よくわからない)。
 そもそも、いわゆる「時代の閉塞感」(イージーな言葉遣いで申し訳ない)のためか、本棚やCDラックに限らず、将来の自分のあるべき姿を思い描く、そんな意識そのものがいまや希薄になってきているようにも見受けられる。かつてはごく自然に思われた「いつかはクラウン」という高級車のキャッチコピー、これは最近の若者にはもはや意味すら伝わらないのではないだろうか。

 さて、電子書籍だ。
 あくまで個人的には、だが、少しばかり嫌な時勢が近づいてきているような気がしてならない。

 電子書籍について、現時点では、コンテンツ(本)の提供の仕方(フォーマット)も、端末(ハードウェア)もビューアー(ソフトウェア)もさまざまで、レコードからCDに一気に移ったときのように明確な一本道が示されているわけではない。
 そして、その試行錯誤が続けば続くほどに、フォーマットやビューアーの混在、権利問題の複雑化などのために、たとえば、子供のころにめぐり合った物語を、大人になってふと読み返したいと思い立ったときには、そのデータを収めた端末(たとえばノートPC)は立ち上がらず、ハードディスクからようやくデータを吸い上げてもビューアーはバージョンが変わっていて表示できず、ようやく古いビューアーを見つけてきてもパスワードが思い出せない……といったことがまま起こりかねない。

 「本」は、場所はとるが物理的には不変である。捨てない限り100年前の本でも読み返すことができる。
 電子書籍は、おそらく、そうはならないだろう。ビューアーが統一され、100%上位互換性が保たれればまだしもだが、おそらくそれは期待できないだろう。カセットテープやベータマックスの資産が無駄になる、そんな事態が今後は多発するに違いない。

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