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2010/11/22

電子書籍について気になるいくつかのこと その五

 既存の、とくに大手出版社は、今後の電子書籍の時代に生き残ることができるだろうか。厳しそうだが、おそらくコンテンツ提供者ないし整形者としてWeb企業と提携し、生命維持をはかっていくことになるのだろう。

 一つ言えることは、「編集者」という生き物には(平均すれば)極めて生きづらい時代が訪れるだろうということだ。

 なにより、「本」を発行する/しないの決定権を独占できなくなるのだから、内容に関する特権はまず維持できなくなるだろう。
 紙の「本」では求められて当然だった彼らの仕事は、どんどん失われていく。
 前回書いたとおり返品処理が必要ないのだから発行数の管理も不要だ。月刊、週刊の雑誌に初出という形態が必須でなくなれば、締切という概念、スケジュール管理という仕事の質も変わっていくだろう。電子書籍においては、ページデザインや文字フォントの扱いなどは端末(ハードウェア)やビューアー(ソフトウェア)や読み手の選択に委ねられる。したがってレイアウトの細かい作業は不要となり、それらは発表の場(サイト)やツールの選択、つまり作家の側の業務分掌となる。400字詰め原稿用紙やケント紙1枚換算だった原稿料の扱いも変わってしまい、文字校正さえ、原稿作成時のアプリケーションがある程度面倒をみてくれることだろう(Wordの波線は意外と優秀だ)。「本」の広告・宣伝も、ネット上ではノウハウがまるで違う。
 要は、作家サイドが自由に「書籍」を制作でき、好きな場所から配布できる時代に、従来のような門番かつ裁判官としての圧倒的な権勢はふるいようがないということだ。

 また、編集者として自由になる経費も激減するだろう。
 Web上で雑誌のようなものを発行したとしても、なかなか紙媒体ほどには広告収入は得られないに違いない。なにしろWeb上にはいたるところに広告スペースがあり、その宣伝効果は自社サイトへのリンクないし注文ページへの誘導数に換算可能という点でフラットだ。だから、なにも売れるか売れないかわからない電子書籍に「事前」に取材費や交際費を使わせる必要はない。クライアントはさまざまな場所に広告リンクを張っておき、効果があった分だけ広告料を支払えばよい。「この本は売れるはずなのでPR出稿いかがですか」と広告費をかき集め、それを充てにロケ隊を組む、といった従来のやり方は成立しなくなる。宣伝効果のあったクリック数だけ広告費を支払うという、ある意味自然な経費の流れは、出版における新たな挑戦、言い換えれば出版社としての投資、冒険の蓋をふさいでしまうかもしれない。

 今回書きつらねてきたことは、編集者の受難であると同時に、そもそもの出版社不要論でもある。
 タイトで厳しい薄利多「クリック」(今後は多「タップ」か)のネットビジネスの世界では、従来と同じ数だけの編集者(=アドバイザー)を食べさせる余裕はない。極端な話、廉価に発注できる「作業屋」さえ少数いればよいのだ。もちろん、電子書籍においてもつんくや秋元康のようなプロデューサーが登場し、活躍する素地は十分ある。しかしそれは極めて特殊な例にとどまるだろう。

 問題は、その一方で、編集者がいなければ決して形にならない作品もこの世にはある、ということだ。

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