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2010/11/09

電子書籍について気になるいくつかのこと その二

 もちろん、電子書籍の利便性を認めていないわけではない。
 たとえば、紙の本ではまず不可能な精度と速度での文字列検索。この作品でこの言葉が何度出てきたか(出てこなかったか)、この作家はこの動詞とこの副詞が好みらしい、等々、用途は広い。おそらく、電話が普及してはじめて「蕎麦屋の出前」が日常生活に入り込んだように、現在の読み手が想像できないような活用法がいずれ読書の世界を席巻するに違いない。
 「本棚」という概念についてみても、ネットにつながっている限り世界中の書店、図書館に自由に出入りできるも同然、という時代が遠からずやってくるに違いない。運悪く通信状態の悪いところにいても、ハードディスクやUSBメモリの一隅にブックデータを保存しておけば、一週間や二週間は読むものに不自由しない、その程度なら現時点でも可能だ。

 しかし一方で、電子書籍では喪われるかもしれないと思われる「読み方」もないわけではない。

 たとえばカラスは、毎晩、何か軽め、うっかり湯に落としてもまあしかたがないと思えるような文庫本を1冊本棚から選んでは風呂場に持ち込み、一通り汗が噴き出るまで湯舟で読み呆ける。
 枕元にはやや難しめ、ただし一章一章は短めの本を積んでおき、適当にぱらぱらめくって眠くなったら放り投げて一日のおしまいとする。
 ちょっと気になったら鉛筆で傍線を引く。書き込みをする。折り目を入れる。

 逆に、何か月も逡巡したあげく、とうとう購入したハードカバーの大作美術論。うっかり食べ物をこぼしたりしないよう、姿勢を正して読む。一段落したら、カバーをかけて本棚にしまう。

 こういった読み方の一つひとつが、電子書籍について不可能なわけではもちろんない。防水端末も出るだろう、しおりやラインマーカーの機能も用意されるに違いない。
 ポイントはその前、本棚や店頭から自分の求める本を選ぶ、これにあたる操作を求められるとき、電子書籍は、人のパターン認識の速度についてこられるのだろうか?

 手に取ってぱらぱらめくるだけで、読み物としての軽さ重さがわかる。分厚さ、文字の案配(活字の大小、改行やセリフの多い少ない)。漢字の頻度、挿絵のあるなし。言葉遣い。それだけで読了までにかかるおおよその時間と、自分にとって、今必要かどうかを判定できる。

 読書家の目ぢからは半端ではない。たとえば『ファウスト』の上巻はまだしも、下巻は大変そうだ、という比較判定に、ほんの数分。電子書籍のビューアーが、この速度についてこられるとは正直思えない。

 電子書籍は、1ページ分、もしくは見開き分を読ませる、という点では確かに「本」と同等なことができるかもしれないが、「本」という物体で可能なことがすべてできるわけではない。
 iPhone、iPadでいしいひさいちを読む。これはわかる。伊坂、東野、許容範囲かもね。しかし、水村美苗は、マンディアルグは……さあどうだろう?

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