フォト
無料ブログはココログ

« 『新クロサギ』(第6、7巻) 黒丸、原案:夏原 武 / 小学館ビッグコミックス | トップページ | 電子書籍について気になるいくつかのこと その一 »

2010/11/01

定番の秋 『百鬼夜行抄(19)』 今 市子 / 朝日ソノラマ 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス、『もののけ草紙(参)』 高橋葉介 / ぶんか社コミックス

 「定番」の作家、作品がある。
 書店で見つける(最近はインターネットの物販サイトからお知らせメールも届く)。躊躇なく購入する。ひと息にめくり読む。いつでも取り出せるようクローゼット、手前の棚に押し込む。
 必ずしも毎度極上の味わいというわけでもない。それでもよほどのことがなければ買うのをやめたりしない。棚の背表紙を仰ぎ見ればいずれもきちんと帯がついてにぎにぎしい。

 この秋はそんな「定番」の怪奇モノが2冊。

18  『百鬼夜行抄』も気がつけば連載開始から15年、単行本にして19冊め。そうなると、少し前の単行本がどんな内容だったか思い出せない。見かけなくなった登場人物はどうなって消えたのか。ときどきアットランダムに読み返すのだが、元来コマ割りのとらえづらい、つまり時間、空間の行ったり来たりが極めてわかりにくい作風であり(おまけに人物の描き分けが世辞にも巧いとは言い難い)、話を追うのが面倒でなかなかまとめて読み返すにはいたらない。もっともこの作者の描く「妖怪」は姿、かたちはおぼろなまま、時間を跨ぎ越えた「事件」「事故」あるいは「罠」として描かれることが多いので、他の怪奇マンガに比べて読みづらいのはやむを得ない。そのように込み入った「妖怪」を紡ぎ続けてきた作者の想像力こそ高く評すべきだろう。
 最新の19巻は、祖父の蝸牛が悪意の塊のような妖怪赤間(鬼灯)とからむ話が巻末に用意されており、その分空気に一種の厳しさがこもる。ただ、どうしても最近の数巻はバタついた印象が否めず、『百鬼夜行抄』の最も出来のよい巻を★5つとすると、★3つくらいか。
 とはいえ、もう、どれが★5つでどれが低評価だったかなど今さらわからない。一読評価の低かった巻のほうが、読み返して新たな発見をする楽しみもある。
 ともかく一度や二度読んだのでは何が何だかわからない、秋の夜長のためにあるような作品である。

3  高橋葉介『もののけ草紙』の主人公「手の目」は、同じ作者の『夢幻紳士』シリーズにいじられ役で登場し、その後独立した。当節流行りの「スピン・オフ」とかいうアレである。おして知るべし朝日はのぼる。とはいえ、この作者のキャラクターはどれも芸風が似ていて、朝も昼もないのだが。
 それどころか、この二十年ばかり、この作者の短編は、プロットだけみれば同工異曲、いや異曲とさえ言い難い。
 いわく、登場人物の前に何者かが現れる。実はオバケ。グギャーとかいって襲いかかる。主人公は実はオバケの正体なんぞわかっていてそいつをパクリとやっつける。
 冒頭の登場人物が主人公の場合もあれば、別の人物の場合もある。オバケは、妖怪の場合もあれば、人間の醜い心の場合もある。パターンはみえみえ、オバケの暴れ方もバリエーションが豊富というわけでもない。
 それでも、オバケを退治してペロリと舌を出す主人公の妖艶な流し目、それにおひねりを放るよな案配でこの紙芝居観劇はやめられない。
 『もののけ草紙』の3巻も、残念ながら葉介作品中レベルの高いほうではない(この1冊から高橋葉介に入るのはお奨めしない)。それでも、『夢幻紳士』でお馴染みのあの女将に「ああ 本当に久しいね」と優しい目を向ける「手の目」の表情(もちろん女将はいまや亡霊だ)、この1コマのためだけでも単行本を買った甲斐があるというものだ。眼福眼福。

« 『新クロサギ』(第6、7巻) 黒丸、原案:夏原 武 / 小学館ビッグコミックス | トップページ | 電子書籍について気になるいくつかのこと その一 »

コミック(作品)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『新クロサギ』(第6、7巻) 黒丸、原案:夏原 武 / 小学館ビッグコミックス | トップページ | 電子書籍について気になるいくつかのこと その一 »