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2010/08/15

夏なのに (;゚Д゚))))ガクガクブルブル 鬼籍通覧シリーズ『暁天の星』『無明の闇』『壺中の天』 椹野道流 / 講談社文庫

Photo 【袋の底に、ごく少量たまっているのは、茶色い濁った液体と、土くれのようなもの。腐臭は、間違いなくその液体が発しているものであろう。】

 シリーズ最初の1冊を一気読みして……あ、あー、びっくりした。
 謎解きがないんだもの。

 (ほかならぬ)講談社文庫で、このタイトル、この装丁。
 本格ミステリでなければ何かの間違い、いっそ詐欺!というものだろう。

 書店で見つけたのはシリーズ3作め『壺中の天』。
 まず、タイトルが目についた。諸星大二郎の短編表題にも用いられた言葉で、後漢書の故事に由来し、「俗界と切り離された別天地。酒を飲んで俗世間を忘れる楽しみ。別世界。仙境。壺中の天地」(大辞林)の意。次いで、表紙カバーの惹句。「(前略)ところがその遺体が、警察に搬送される途中で忽然と消えてしまった。さらにミチルに謎のメッセージが送られてくる。怖ろしすぎるラストまで目が離せない!」。
 O医科大学法医学教室を舞台にした「鬼籍通覧」シリーズとな。面白そうじゃないか! 買うか? 買おう。読むか? 読もう! 椹野道流(ドウリュウとでも読むのであろうか?)なる作家がなぜこれまで自分のアンテナに引っかかってこなかったのか、心の片隅でチリチリと小さく警鐘の鈴が鳴るのに耳を塞ぎつつ、とりあえずシリーズ最初の3冊『暁天の星』『無明の闇』『壺中の天』をむんずと掴んでレジに急いだとして、いったい誰が責められよう、いや責められはしない。

 そしてその勢いのまま1冊めを読み上げたところで、本文フリダシに戻る。本格ミステリじゃないんだー。
 おまけに文体がライトノベル。主人公の一人、伊月崇の口調は
「うわ、マジかよ」
だったり
「どうしたもこうしたもないっすよ!」
だったり。
 彼が朝が苦手で人より三十分ばかり遅く現れる、それを受付嬢がからかう、そんなものが「ほのぼの」のツボらしい。そんなやり取りが何度も出てくる。読むのがつらいっす。
 どうやら作者はBL系の小説で知られた方らしい(道流は登場人物の一人と同じミチルであったか!)。それもなかなか大量生産の人であった。知らなかったっすよ。

Photo_2  しかし。そういった諸々はさておき、この鬼籍通覧シリーズ、とくに1冊めの『暁天の星』と3冊めの『壺中の天』は怖い。実にもうたっぷりと気持ちが悪い(ホメ言葉ですよ)。

 まず、登場人物たちのふにゃらけた関西弁に似合わぬ、リアルな解剖描写。腐敗した老婆だろうが、ねじくれた子供だろうが、ひとたび変死体を台に乗せるや次から次へ無造作にざくざくばきばき腑分けていく人々。切り開いた胸の肋骨を折る腕力を笑いながら競う、そういうお仕事なのだ。
 そして、ぬちゃぬちゃの解剖シーンのすぐ後に毎度毎度展開されるボリューム豊かなお食事シーン。作者はもともと法医学教室勤務とのこと、おそらくリアル世界で日々何百回何千回と「解剖の後で食事なんてできるのぉ?」と好奇の質問を振られ続けてきたに違いない。思わずムキになってのことだろう、ねたねた生焼けな焼き肉やトマトソースべったりのパスタを頬張りながら最前捌いた遺体の所見を語り合う登場人物たち。
 さらに、本書をミステリではなくホラーたらしめている超自然現象……。理屈でいえば、『暁天の星』のエンディングも、『壺中の天』の冒頭で遺体が消えてしまうのも、超自然現象としてもツジツマが合わない。だが、そんなことを気にしている余裕がない。思わぬ展開と転がり出てくる死体の気持ち悪さにただうろたえるばかり。

 殺害した主婦をばらばらにし、風呂場でその上を転げまわりながら「芋虫ごーろごろ」とうそぶくお話も、殺した被害者の皮を剥いで縫い合わせ、それを着て楽しむサイコパスのお話もいずれも大好きで、食事中もページをめくる手をとめなかった烏丸が、さすがに寿司屋で『暁天の星』を読むのを躊躇した、と言えば、どうでしょう、読んでみたくなりましたか。

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