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2010/04/05

絶版しない豪奢 『決闘・妻』 チェーホフ 作、神西 清 訳 / 岩波文庫

Photo 【君、氣は確かだらうね。】

 チェーホフを追ううちに、たまたま入手した1冊。
 『決闘・妻』のタイトルに見覚えがなかったため、新刊か改訂版かと手に取り、奥付を見て驚いた……否、正直「呆れた」。

 なにしろ、
   1936年6月15日 第1刷発行
   2005年2月22日 第15刷発行

である。つまり、第二次世界大戦前の昭和11年に初版を発行して以来、改訂も行わず、70年めにして15刷発行。ちなみに昭和11年といえば、二・二六事件の年だ。

 あまり知られていないことだが、岩波文庫には原則的に「絶版」がない。つまり、品切れになって何年、何十年経とうが、岩波のラインナップとしては現役、と考えるのだそうだ。そして、リクエストが多そうに見えても復刊しないものはしない、かと思えば誰のためにと思われるようなマイナー、ローカルなタイトルをひょいと再版してみたりする。

 本書もそういった再版本の1冊だったのだろう。
 表紙まわりや奥付、巻末の在庫目録はさすがに新しいが、本文や解説はすべて旧字、旧仮名遣い。それが活版印刷特有、それも紙型を通したのかがたぴし綻んだ小さな文字で並んでいる。
 「客と話しているあいだじゅう」は「客と話してゐるあひだぢう」、「恋愛」は「戀愛」、「わきまえる」は「辨へる」。「サガレンの旅」とあるからどこのことかと思えばサハリンのことだった。
 漱石や芥川を読むときは旧仮名のほうが目がなじむ。本書は未読だが、神西訳でもあり、楽しみにしている。

 それにしても、この平成の世に、チェーホフの、それも「決闘」に「妻」という、決してメジャーとは言いがたいカップリング。一体、何をきっかけに、何冊印刷されたのだろう。
 たとえば、どこかの大学の先生が、授業で使うために必要な部数だけ再版を依頼した? うーん。烏丸がこの1冊を買い求めてしまったために、入手し損ない、単位を落とし、留年が決まり、下宿屋の屋根裏の一室でサモワールのお茶を手に途方に暮れる露文学生РРР君。すまぬ。

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