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2009/07/21

今が旬、と思っているうちに10巻まできた 『GIANT KILLING ジャイアントキリング』(現在10巻まで) 著作 ツジトモ、原案・取材協力 綱本将也 / 講談社モーニングKC

979 【これがクラブだよ 後藤】

 「giant killing」とは「大物食い」「番狂わせ」といった意味のスポーツ用語で、相撲でいうところの「金星」みたいなものらしい。
 本作の主人公 達海猛はかつて日本代表にまで選ばれたサッカー選手だったが、今はイングランド5部のアマチュアクラブの監督として、チームをFAカップでベスト32に導く手腕を見せる。彼は「弱いチームが強い奴らを やっつける(GIANT KILLING) 勝負事においてこんな楽しいこと他にあるかよ」という志向性の持ち主だ。プレミアリーグのクラブを一時は3-2と逆転、リードした達海だが、結局は敗北、旧友の招きに応じてかつて自分が所属していた日本のプロクラブETU(East Tokyo United)の監督を引き受けることになる。低迷するETUのベテラン選手やサポーター達は、ETUを見捨てて海外に移籍した達海の監督復帰に激しく反発するが……。
 ここまでで1巻の半ば。なかなかスピーディーな展開である。その後は、達海率いるETUの1年間の奮戦ぶりがぐいぐい描かれて現在10巻。

 この作品のポイントは、脇役キャラクターの魅力(椿やジーノ、黒田、夏木といったETUのメンバーはもちろん、日本代表監督ブランとか名古屋ブラジルトリオとか)やスピーディーな試合展開はもちろん、監督を主人公におくことで、サッカーというスポーツの特質である「フォーメーション」をさまざまなアングルから描いてみせたことにある。
 何より、紅白戦からキャンプ、プレシーズンマッチ、リーグ戦、カップ戦にいたる、一つひとつの試合や場面に意味を持たせる展開が巧い。キャプテンシーの意義、FWのあり方、DFのモチベーション、負けグセからの意識の切り替え、ベテランの活性化、サポーターやクラブのあるべき姿、そういったテーマを一つひとつの試合やイベントに結びつけ、それぞれをどうすることが勝利につながるか、「特定の選手にスポットを当て、達海がその選手のプライドや思い込みを打ち砕き、結果的にその選手の活躍につながることによって当人の意識、技量を再構成する」ことを繰り返し、結果的にETUは少しずつ強くなっていく。
 スポーツマンガとしての勝った負けたがごく普通に面白いのに、それに加えて全体の骨組みが学習参考書のように主題中心の構成になっているわけだ。このことが作品に立体感を与えている(連載ではこの後、スポンサーやスカウトのあり方についても扱うらしい。「律儀」、と評してよいだろう)。

 本音の読めない達海の戦略にのせられ、踊らされ、風に舞う落ち葉のように翻弄されるのは読者も同様。そうこうするうちに気がつけばETUのサポーター気分でドキドキハラハラ、あげくに達海の作戦がツボにはまり、くすぶっていた古参あるいは若手選手が強敵相手にゴールをあげ、ベンチの監督やコーチがぐいぐいガッツポーズ、この展開は何度読んでもたまらない。申し訳ないがこのところのJリーグの試合などよりよほど面白い。添付画像は8巻の表紙だが、ガッツポーズをしながらも顎を引く、これは勝負師にとって大切なことだ。

 ところで、かのウィキペディアでは本作について「サッカー漫画では未知の領域である監督をテーマに描く」と持ち上げている。しかし、未知の領域といえばさらに一歩先をいったサッカーマンガがあった。それは……。

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