素焼きの手触り? 『唐宋伝奇集』(上・下) 今村与志雄 訳 / 岩波文庫
『捜神記』『剪燈新話』『日本霊異記』『今昔物語集』などなど、昔の説話集をぱらぱら散策するのは楽しい。洗練された磁器ではなく、素焼きの陶器の魅力である。多少の説教臭さなど、現代人フィルターが勝手に濾過してしまうので平気だ。
岩波文庫『唐宋伝奇集』には唐代宋代の説話が、見目よくいえばバラエティ、有り体にいえば脈絡なく雑多に収録されている。蒲松齢『聊斎志異』と異なり、作者も時代もまちまちなので、長さ、味わいもそれぞれだ。
下巻巻頭には牛僧孺作とされる「杜子春」が収録されている。いうまでもなく芥川龍之介「杜子春」はこの翻案である。
元祖「杜子春」も芥川のもの同様仙人に無言の行を命ぜられ、艱難辛苦に耐えに耐え(父母は出てこないが、妻が脚を一寸刻みに斬り落とされる)、口をきかないまま女に生まれ変わり、あげくに夫に自分の子を殺されたところで初めて声を上げる。その後は救いもなくただ放り出されるだけだ。
ついつい、のちに書かれた芥川版のほうがよりテーマを突き詰め、人間の相克を描いているに違いないなどと考えがちだが、牛僧孺の原作のほうがよほど厳しく深く、また超絶的なものが感じられて好もしい。繰り広げられるエキセントリックな拷問の数々の尖り具合、杜子春が女に生まれかわるなんていう奔放さに加え、登場人物個々の関係と目的意識が鮮明で、早い話が芥川よりよほど現代的なのである。素焼きなどとは失礼千万、色絵も細密な青磁の出来だった。
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【そう言うなり、子供の両足を持ち、頭を石に叩きつけた。】
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