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2008/09/06

日なたと日かげの物語 『オチビサン 1巻』 安野モヨコ / 朝日新聞出版

883【ひとりだって楽しいもの】

 朝日新聞で毎週日曜日に掲載されている『オチビサン』、連載のはじめの頃を見逃していたこともあり、奇麗な単行本にまとめられて、とても、嬉しい。

 登場人物は毎日遊びに忙しい、きりりとした顔つきの「オチビサン」、その友だちで読書家の「ナゼニ」、その友だちの「パンくい」。彼らは昭和の色濃いどこかの町で日々季節をめくる。折々の花。水遊び。柏もち、かき氷、枯れ葉ふみ。日なたの匂い。

 単行本では右ページにグレースケールの英語版が掲載され、作品のリズムやシニカルなやり取りがスヌーピーの『ピーナッツ』によく似ていることがうかがえる。同時に、『オチビサン』の世界が『ピーナッツ』のように明るく乾いた陽光の下にあるわけではないことも、よくわかる。

 子どもと、犬と、老人しか登場しないオチビサンの町は「死者の国」ではないか、ふとそんなことを思う。
 一年を通して(風呂の中でさえ)脱ぐことのないオチビサンの帽子は、ある種の病気、治療の副作用を示すものだったのではないか。

 そうでないなら、何ページかに一度、子どもを亡くした母親のようにたまらなく切なくなる、読み手のこの思いをどう説明すればよいのか。去っていくだけの電車、「どこか遠くの町」にいるという父親、間に合わなかった電話、それらから立ち上る寂しさをどう納得すればよいのか。

 いずれにしても、夕暮れ時に子どもが一人火鉢の前でざぶとんに座って「・・・・寒いな・・・」とりりしく窓を見上げる、それでコマを閉じる作品になどそうそうめぐり合えるものではない。

 四季を描くことは絶え間ない死と出合うこと、などと思ってみたりもする。

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