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2007/04/02

濁流のような情報そして時間 『気まぐれコンセプト クロニクル』 ホイチョイ・プロダクションズ / 小学館

894【大人のやることではない。】

 このところ,夢が,重い。
 普段は夢など目が覚めたらすぐ忘れてしまうのに,なんだか妙に一場面一場面が濃密であとをひくのだ。
 理由は,たぶんこれだろう。『気まぐれコンセプト クロニクル』。
 そこらの辞書より分厚い974ページ,重量は優に1キログラムを超えて愛用のノートPCより重い。見開きに四コマが4作並んでトータルざっと2000作,この数はいしいひさいちのドーナツブックス15,6冊分に匹敵する。

 その内容が「バブル前夜から始まって,バブル絶頂,バブル崩壊,不況の90年代,ネットと携帯の普及,そして景気回復の2006年へとつづく,疾風怒濤の23年間の,日本人の日常生活を覗くタイムマシン」(「はじめに」より)とあれば,これを毎晩寝る前に少しずつ読んで(仰向けでたくさん読むのは腕がもたない),夢が重くならないわけがない。
 道理で夢の中で妙に意味ありげに登場しては説教臭い台詞をものする連中が,あの(今はない)会社のあの人だったり,あの部署の(今はどこに行ったかわからない)あいつだったり,浮いて沈んで沈んで消えて,そんなことはどうでもいいのだけれど。なんだあんたはまだそこにいたのか。

 『気まぐれコンセプト』はカブト自動車,白クマ広告社といった広告クライアント,広告代理店の社員たちの生態(変態?)を描く四コママンガだが,実は現在もまだ続いているとは知らなかった。正確にいえば,スピリッツを読まなくなって10年近く経つが,自分がスピリッツを読んでいた頃,すでに連載が終わっていたように勘違いしていたのだ。
 多分,バブルがはじけた後は連載が収束していったように勝手に思い込んでしまっていたのだろう。四コママンガとしては,同じスピリッツ誌上に『コージ苑』『伝染るんです』『クマのプー太郎』等インパクトの強い作品が多かったため,「ギョーカイ」通ぶりが鼻につく印象ばかりでギャグとしてもそう評価はしていなかったように思う。
 つまりは,『気まぐれコンセプト』は連載開始当初より決して好きな作品ではなかったし,四コママンガとしてもとくに注目に値するものではないように感じ,あげくに自分の中で勝手に使命を果たしたものとして連載を終わらせてしまっていたのである。

 だがしかし,ホイチョイ・プロダクションズ,恐るべし。
 こうして23年分の作品をセレクトして一望にすると,広告業界の馬鹿ばかしさや時代の流行の愚かしさをその場その場で追ったこの作品が,何より雄弁な現代の記録となっているのは明らかだ。六本木のもうとっくにつぶれたプレイスポットや,あっという間にブームの去った商品を取り上げたギャグで笑えるかどうかは別として,それらを均等な重みづけで描き続けた仕事は,アニメ版『サザエさん』とまったく逆に,あらゆる風俗,ブームを取り入れてただ垂れ流すように見えて,その結果23年の間で変わらないものは企業人の見苦しいばかりの生命力だということを見事に描いてその点では文句のつけようがない。

 『気まぐれコンセプト』を語るというのは,作品について語るのか,ホイチョイというクリエイター集団について語るのか,それとも時代について語るのか,区別がつけにくい。
 ひとつ言えることは,『気まぐれコンセプト クロニクル』は言うなれば80年代から2006年までの『現代用語の基礎知識』である。知識などそれだけでは毒でも薬でもない。薬や毒がそうであるように,それが意味を持つためには傷や病や憎悪が必要なのだ。

 もっとこまごましたことを書きたいようにも思ったのだが,きりがないのでやめにしよう。もしこまごましたことをきちんと書こうと思ったら,付箋やメモを片手に何度か読み返す必要があるに違いない……これを?

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