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2007/02/13

今さらながら 『蛇にピアス』 金原ひとみ / 集英社文庫

972【シバさんは私の口を開け,眉をひそめてのぞきこんだ。】

 綿矢りさ『蹴りたい背中』が「少女マンガにもっといくらでもいいのがあるだろうに」という手応えしか得られなかったため,芥川賞で並び称された(賞された?)金原ひとみの単行本も棚ざらしになり,結局読むことなく処分してしまっていた。
 最近になって文庫(中古,105円)を手に取ったのは,新聞の書評やダリ展に寄せた金原の文章がいかにも「役割を心得た」もので,おやこれは綿矢とはまったく逆に,案外したたかな「プロ」かもしれないと思いいたったためである。

 結論からいうと,『蛇にピアス』は非常によいというほどではなかったが,予想より悪くもなかった。つまり,綿矢に比べれば,格段によかった。

 舌にピアスがどうの,スプリットタンがどうの,そういった話題は芥川賞受賞当時にうんざりするほど目にしたので,ここでは取り上げない。特筆すべきは,そういった過激な設定,過剰な性描写を抑えた文体で淡々と記していることで,まずそれだけでも評価に値する。
 逆にいえば,それだけだ。

 この作品で描かれたような精神のあり方を,今さら追体験したいとは思わない。憬れもしなければ,否定もしない。そこにも人間の真実があるのかもしれないが,何もそのあたりを探さなくとも真実なんていくらでも落ちている。

 それでも,この作品で試みられたことは,ここ百年ばかり,世界のあちこちで文学や演劇が挑戦した競技の一つである。セックスや暴力や無軌道を乾いた文体で展開することが,なんらかの精神の解放に結びつくという志向,もしくは作法,もしくは思い込み。それがオレオレ詐欺のように性懲りもなく繰り返される詐術なのか,それともいつかはどこか予想外の突破点に至るのか,それはよくわからない。
 金原の文体は無造作で,自分の描く一言一句については意図的ではないかもしれないが,全体では何をやっているかわかっているような気がする。それが意図的である限り応援したい,と言ってもよい。

 それにしても……あまり付き合いがないからよくわからないのだが,こういったいかにも内省的でない若い女が,このような内省を繰り広げるということはよくあることなのだろうか。たとえば,本当にボキャブラリーの少ない女が「私のボキャブラリーの少なさがこんなところで暴露された」などというモノローグをものするのかどうか,などなど。

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