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2007/01/29

絶句 『舞姫(テレプシコーラ) <10> 第一部完結』 山岸凉子 / メディアファクトリー(MFコミックス)

895【自分の身体能力を越える踊りを振り付けることがいかに恐ろしいことか…】

 驚いたことにこの「くるくる回転図書館」で『舞姫(テレプシコーラ)』の第1巻を取り上げたのが2001年7月。もう5年半という年月が過ぎていました。

 『舞姫(テレプシコーラ)』がどのくらい売れているのかは知りません。『日出処の天子』のときのように大きな話題になっている気配もありません。
 連載が始まった頃には主人公篠原六花(ゆき)はまだ小学5年生,同級生の須藤空美に配された設定こそ苛烈極まりなかったとはいえ,全体には小さなバレエ教室の中の嵐,そんな印象でした。空美が六花の前から消えてからは,舞台での小さな事故や学校でのいじめ,プリマを目指す少女たちのダイエットの悩みなど,いずれも地方都市のバレエ教室にありそうな事件ばかり……。

 そして,その,どこにでもありそうな出来事の積み重ねが,どんなに惨い代償を生むかか,どれほど人を変えてしまうか,この第10巻はこの物語がやはりただならぬものであることを突然あらわにし,読み手を動揺させます。顔色を失わせる,と言い換えてもいい。
 第1巻のときに記したことを,改めて書いておくことにしましょう。
 山岸凉子という作家の制限(リミット)は,やはりどこかほかの作家と異なるようです。

 第一部完結となる本巻の最後の数ページに得られるカタルシスは,その作者が登場人物たちに科した重荷が過酷であるがゆえに圧倒的です。
「その恐怖を押さえ込んでまで振り付けたいものが 自分の中にあることを発見したのだ」
 ここにおいて『舞姫(テレプシコーラ)』は,ようやく表現者の物語として幕を開けました。そして,山岸凉子が淡白な筆遣いで描くその道程は,なんと恐ろしいもの,であることか。

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