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2006/12/17

『KATANA (1) 襲刀』 かまたきみこ / ぶんか社

343【客から預かった刀でおまえがコロコロ遊んだあとは なぜだか刀が優しくなったもんだ】

 伝統ある刀匠の家に生まれ,人間国宝の祖父とその技術を受け継ぐ父に育てられた成川滉(あきら)。彼には刀自身の姿がなぜかまるで人間のように見える。
 滉は刀鍛冶の仕事を継ぐつもりはないが,中学卒業と同時に「研ぎ」の仕事を任されるようになり,やがて刀をめぐるさまざまな事件に巻き込まれていく。

 かまたきみこは,『クレメンテ商会』でもOA機器が人間に見えるなんていうとびっきりな設定を描いた作家で,刀たちの本性が人間の姿に見える描写などお手の物だ。呪われた名刀がキレた美少女,などはありきたりとしても,ヘタクソな研ぎ師にあたって錆びた刀がうらぶれ不貞腐れた与太者姿で,それが主人公に研がれるにつれ月代(さかやき)もこざっぱりしたきまじめな浪人姿に変わっていくあたりなかなかおかしい。
 刀鍛冶の厳しさを知るだけに刀とかかわることを避けようとし,それにもかかわらず常に刀がらみの事件に書き込まれる主人公がばたばたしたギャグノリであるのに対し,描かれる事件そのものは存外に陰惨で切ない。言うならばガラスを金属でひっかくような状況を,主人公が刀を「研ぐ」ことで和らげていく。かまた作品ではおなじみクールで無頓着な女の子も登場し,物語はにぎやかかつ若干アンバランスに展開していく。

 連載化することを想定していなかったため,読み切りだった第一話と第二話以降の設定が微妙に異なること,主人公が「見えてしまう」能力のためにさまざまな怪異に巻き込まれていく設定など,今市子の『百鬼夜行抄』を思い起こさせる。だが,かまたきみこの本領はおよそ「ホラー」に程遠く,刀剣を扱うだけに死人が出ないのが不思議なほど危ういシーンも少なくないが,それでもその本領は喪われたものたちへのやさしく遠い目線にある。

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