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2006/11/05

女の子は 人形じゃないんだから 『スミレ 17歳!!』 永吉たける / 講談社コミックス

17342【きっと誰かに届くハズです】

 ヘンなキャラにヘンな設定,そういうマンガなら多少は見慣れている。ましてやこんなショボい絵柄,今さら驚くことも……と油断してたら,うう。驚いた。

 主人公はおちゃめで明るい女子高生の四谷スミレ。
 ……ではない。多分。スミレは口元に切れ目の入った腹話術の操り人形であり,真の主体はそれを操っている黒子のオヤジのほうである。

 が,「ゼイゼイ」「ヒパーヒパー」と息切れする以外一切セリフのないこのオヤジが何者で,何を思って人形女子高生を操っているのかはまったく説明がない。
 ポイントは,操られているスミレが自分のことをごく普通の女子高生であると信じて一片の疑いもないことだ。オヤジはスミレがスミレであるためだけに愚直に力を尽くし,スミレはスミレでオヤジが蹴られようが殴られようが「フン 超空振り~ みたいな!!」と意にも介さない。ときどき勢いでスポッとスミレの首が抜けて,追うオヤジ。走るオヤジ。

 スミレは行く先々で騒動をまき起こす(それはまぁ,そうだろう)。スミレはまっすぐで優しくて夢見がちで,友だちの輪を広げ,ときどき壁にぶちあたった若者たちを立ち直らせる。
 スミレの言動は当然すべて黒子のオヤジによるものなのだが,とてもそうは思えない。少年たちはオヤジの操る人形とわかっていながらスミレに恋をしてしまう。おっちょこちょいなスミレだが,そこは年の功(?),恋する少年の扱いだけは妙に達者だ。このあたり,構造を冷静に考えるとかなり気色悪い。

 オヤジにはかつて娘がいて,とか,ウェットな背景を想像するのはたやすいが,この細目のオヤジは黒子に徹して,決して私生活を見せない。生活費はどう捻出しているのか?
 朝日新聞の書評は本作を「萌え」の構造を白日の下にさらけ出したと指摘したが,どうだろう……少し違うような気がする。ギャグとシリアスのバランスについては,徳弘正也『新ジャングルの王者ターちゃん』あたりを思い起こす。だから何,ではあるのだが。

 『スミレ 17歳!!』は2巻で完結し,週刊少年マガジンに『スミレ 16歳!!』とタイトルを少し変えてリニューアル連載され,単行本もすでに2巻発売されている。しかし,純度については初期の『17歳』のほうが格段に高い。だまされたと思って読んでみよう。たぶん貴方は呆れるだろう。少しだけ笑うだろう。少しだけ泣くだろう。

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