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2006/08/01

クポ? パコン クハ~ッ 『カッパの飼い方(7)』 石川優吾 / 集英社ヤングジャンプ・コミックス

281【田代さんは それで今日ベンチで 泣いていたんだ】

 今野圓輔『怪談 民俗学の立場から』(中公文庫BIBLIO)の冒頭近くに次のような表記があって思わず笑ってしまった。

 曰く,「ことに戦後にはなばなしく復活したのは河童である」
 曰く,「水辺に住む代表的な化け物としてのカッパは,どういうものか最近,妖怪変化界の寵児であって,単行本も出ており,詩や歌にもよまれ」(以下略)

 そうか,はなばなしく復活。詩や歌にまでよまれたか,カッパ。
 ちなみにこの『怪談』,1957年の教養文庫の復刻版である。

 『怪談』の初版から経ることざっと五十年,またしてもカッパは静かに復権していた。たいした生命力である。パコン。

 石川優吾はベテランの割に世評が高いとは言いがたいが,もともと画力,構成力は『童乱』をひくまでもなく相当カサ高い。大きな函を作者本人が本気でチェックせずにほったらかしている,そんな按配だ。
 かくして石川優吾にしてみれば,『カッパの飼い方』などたやすい仕業,文字通りヘのカッパだったのではないか……いやもちろん,こんなもの言いは作家の産みの苦しみを軽んじて全くよろしくない。よろしくないのだが,余技にけろりと描いているように見えるところが本作の魅力の一つなのだからしょうがない。クポ。

 実のところ,『カッパの飼い方』の構造はかなり複雑だ。
 舞台は高度成長期,ようやくカラーテレビが登場した当時の日本。ただしその日本では,古来からカッパが生活の中に存在し,本作でも主人公はペットショップで養殖の仔ガッパを手に入れる。つまり,この作品では,カッパが日常に存在する世界,しかも今からみて数十年前を「現在」として描くという凝ったからくりが用意されているのだ。
 その世界では,カッパがいるという一点を除くと,主人公の住む木造アパート,田舎の風景など,少し前までの日本の風景が(「懐かしい風景」としてでなく)ごく当たり前の光景として描かれる。その光景の中で主人公たちと寝食をともにするカッパ,カッパ,カッパ。
 そこで起こる事件は,たとえば……

 いや,これ以上本書の内容を紹介してしまうのは野暮というものだろう。

 人によっては笑いが止まらないかもしれない。ふんこの程度,と鼻で笑いながら,目頭を赤くする人もいるかもしれない。
 『動物のお医者さん』や『ハムスターの研究レポート』など,動物を描いていわゆる「癒し系」とされるマンガは少なくないが,ページを開いて読んでみないとその空気が想像できない点において『カッパの飼い方』は頭抜けている。
 「かぁたん」をはじめとする仔ガッパたちの仕草のかわいさ,奇妙な生臭さはたまらない。だが,この世界はサザエさんの家のように,同じ時を無限ループして進まないわけではない。仔ガッパは育ち,大人ガッパは年老いる。
 その時代から三十数年を経た(物語世界での)現在,その日本は,カッパたちはどうなっているのだろう。そう考えると軽々しく「癒される」などと言いがたい。昭和四十年代のモノクロ写真と同じ,埃っぽい喪失の予感がここにはある。

 ところで,動物モノ(カッパは動物か?)の多くでは,どうして人間の顔が描かれないのだろう。『ハムスターの研究レポート』も確かそうだったし,そうそう,『トムとジェリー』も人物は下半身しか描かれていないのだった。

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