最近の新刊から 『コミカル・ミステリー・ツアー4 長~~~いお別れ』『恐怖の怨霊絵巻』
『コミカル・ミステリー・ツアー4 長~~~いお別れ』 いしいひさいち / 創元推理文庫
当初は史上まれにみる情けないホームズとワトスンを主人公とした,まがりなりにもオチのある4コマギャグマンガ集だったのだが,4巻ともなるともはやミステリの登場人物に想を得た,さばさばした異界を描くラフスケッチの山となっている。『現代思想の遭難者たち』の作風に近いといえば,おわかりいただけるだろうか……って,読んでなければわからんわぁ!
今回は『ペトロフ事件』(鮎川哲也)から『追憶のかけら』(貫井徳郎),『赫い月照』(谺健二),『ロンド』(柄澤齊),『九杯目には早すぎる』(蒼井上鷹),『ギブソン』(藤岡真)など,実在する87編のミステリ作品を素材にてけてけと4コマが提示されるのだが,国内モノから海外モノ,本格からライトノベルまで,その対象の無節操なまでの広さに圧倒される。こんなんまで読んどんのかいっ! 驚くべきことは,こちらが元作品を読んでいても,何をもって笑うべきなのかオチがちっともわからないことだ。パロディですらない。いったい何なのだ。
独りよがりといえばこれほど独りよがりな作風はない。さりとてつまらないわけではない。奇妙にゆがんだ読後感は残る。困ったことにそれが決して不快ではない。『ののちゃん』を持ち出すまでもなく,読者サービスなどいくらでも提供できるこの作者にしてこの仕打ち,どうとらえばよいのか。
馬鹿げた比較かもしれないが,元作品の人物や設定をパーツにまったく異なる作品を不親切に放り出すあたり,マックス・エルンストのコラージュ作品『百頭女』や『慈善週間』を思い浮かべてしまった。それを「いしいひさいち風」としか評し得ないなら,書評者としては首を吊るしかないのだが。
『恐怖の怨霊絵巻』 山口敏太郎 / KAWADE夢文庫
この表紙,このタイトルで本当に怖い本を求めたらバチがあたる。そのあたりは織り込み済みだ。実際,稲川淳二や平山夢明のような怖さを求める方には本書はお奨めできない。ある夜とうとう女房が寝ないで待っている恐ろしさに比べれば……いいえ,そういうことではなくってよひろみ。何を言ってるんだオレは。
内容は,四谷怪談や累ヶ淵といった古典中の古典的怪談から,昭和,平成の都市伝説ふうまで,あるいは狸や猫の妖怪噺から怨霊亡霊譚まで,縦横無尽というか無作為というか,要は節操なしにかき集めたような按配である。文章も一つひとつが短くて演出に欠ける。
特筆すべきは見開きそれぞれに添えられたイラストの水準で,表紙含めて5人が担当しているのだが,いずれもプロの仕事としてはちょっと信じがたいレベルなのである(網掛けなどの技術はあるのだが,およそデッサンが……)。昭和30年代,創刊当時のマーガレットや少女フレンドの読み物記事の挿絵がこんな感じだったかもしれない。従姉たちと膝小僧つきあわせて読んだ,あれもまた,夏だった。
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