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2006/06/24

強い玄人は目で語れ 『哲也 雀聖と呼ばれた男』 さい ふうめい 原作, 星野泰視 画 / 講談社漫画文庫

6731【まさかあの時 儂が見たと思ってたのは・・ 貴様に 見せられていたのか・・・・】

 少年マガジンでこの連載が始まったときは,驚いた……いや,あきれた記憶がある。
 麻雀ブームが九種九牌で流れて久しく,青年誌においてすら麻雀漫画が聴牌(テンパイ)できるとは思えないご時世に,天下のメジャー少年誌,まして若き日の阿佐田哲也(=色川武大,井上志摩夫)が主人公である。ストーリーは『麻雀放浪記』などの阿佐田作品の裏スジで,古くさい絵柄と合わせて「妙な連載が始まったな。すぐにハコ割って打ち切りかな」と思われたものだ。
 ところがどうだろう。
 『哲也』はその後,マガジン連載陣でもしぶとく浮き続け,西入北入の長期連載と化した。基本は「強力な敵の玄人(バイニン)が登場,それを運と力で打破」のワンパターンだが,たまに旅打ちに出る以外はやたらと手牌を欲張ることもなく,随所に初期の重要人物(房州,印南)を迷彩にからめ,西場北場はさすがにダレたものの,なんとか大きく破綻することなく哲也がアウトローの世界から小説家を目指す海底(ハイテイ)までメンゼンで描き切った。

 本作は連載中もかかさず読んだし,単行本も読んだ。場所を食うので単行本は売りさばいてしまったのに,漫画文庫化されたところでまた山を積んで読み直す。馬鹿だ。
 ギャンブルマンガとしての緻密さ深さには欠けるかもしれない。捨牌から牌勢を読む奥行きや打牌の機微は阿佐田作品や専門の麻雀マンガに及ばない。強運任せのツモり合戦という『哭きの竜』顔負けのタコ1級戦も少なくない。……それでも,何度読んでも面白い。役満は無理でも,タテホンにドラが載ってダマであがれたときの痛快さが繰り返される感じだろうか。

 二の二の天和,ツバメ返し,ドラ爆,エレベーター等々,11PMや麻雀マンガでなじみのイカサマ技や『麻雀放浪記』でも謎が解かれることのなかったガン牌,さらにはいかにも怪しげなコンビによる通し技など,繰り出される技やイカサマの数々とそれを打ち破る主人公坊や哲の読み。房州や印南など,マンガのキャラとしては信じがたいほど情けない容貌であるにもかかわらず,その笑顔がぐっとくる。その死に,目頭が熱くなる。
 全体にこれ以上ない荒唐無稽な勝負の連発なのだが,ドサ健との対決など最も重要ないくつかの対決ではサマなし,ヒラでの勝負に徹するのも味があり,テンポがいい,リズムがいい。終戦直後の泥臭さをまとったまま堂々単行本41巻分描き切って,気がつけば読み手はハコテンだ。もう百点棒もない。

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