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2006/04/19

〔非書評〕重箱の隅つつき その1 『象と耳鳴り』 恩田 陸 / 祥伝社文庫

246 よろず何ごとにつけても批評,紹介は決して容易でないが,なかでもミステリの批評は難しい。なにしろトリックや犯人の人物像をストレートに論ずるわけにいかないため,妙に遠まわし,あるいはありきたりなことなど並べたて,結局ジャンルを特定の上ただほめる,ただけなす,のいずれかになってしまう。
 そこで,最近,あるいは過去に読んだミステリについて,ノドに刺さった小骨というか,気になったところだけ取り上げてみることにした。重箱の隅つつき,ありていにいえばあら捜しである。

 「この短編集をまとめるにあたり,どの短編をタイトルにするか迷ったすえ,装幀のためにこのタイトルに決めた。私がある日古本屋で一目ぼれした東京創元社の三十年前のペーパーバック,バリンジャーの『歯と爪』。是非これと同じ意匠で作りたいと思ったからである。」

 上記は本格ミステリ短編集として評価の高い,恩田陸『象と耳鳴り』のあとがきの一節だ。
 バリンジャー『歯と爪』の装幀の関係者(装幀当人は物故)には了解を取っているのだから読み手がどうこう言うべきではないのかもしれないが,本の作り手のセリフとしては少し神経を疑う。
 「意匠」には「デザイン」のほかに「工夫」「趣向」といった意味がある。本の意匠を「同じ」にしたいということは,オリジナルであることを放棄することだ。ただ先人の工夫,趣向を模する,そういうことでもある。

 恩田陸という作家は,作品名についても似た例がある。
 2・26事件を題材としたSF長編『ねじの回転-February moment』,このタイトルの「ねじの回転」は言うまでもなくヘンリー・ジェイムズの著名なゴシックホラー,「February moment」はハービー・ハンコックのCDからもってきたものだそうだ。作中に必然性があるわけでもなさそうで,ひねりもなくそのままと思うとなにかひるむものがある。

 この作者の意識の中で,意匠とかオリジナリティとかはどういう具合になっているのだろうか。
 ファンタジーやホラーのストーリーテリングの力量で知られ,『六番目の小夜子』『麦の海に沈む果実』など誰もがうらやむようなタイトルを産んだ作家だけに,ことこの意匠やタイトルについての一種の意識の弛緩はなんというか妙に空恐ろしい。

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