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2006/02/16

痛々しさの末裔 『漫画家超残酷物語』 唐沢なをき / 小学館ビッグコミックススペシャル

012【そうそうこう描くと、こういう絵になるんだよ】

 問題は(というのもヘンだが),唐沢なをきだ。

 永島慎二の『漫画家残酷物語』がいかに読者を熱狂させたといっても,40年も昔の,それも(毎度おなじみ)朝日ソノラマ版の絶版で最近まで「幻」と呼ばれた作品だ。直接目にした読み手は多くなかったろうし,ましてや今も漫画誌を愛読している者となるとさらに少数だろう。
 だから,唐沢版『漫画家残酷物語』の目指すものがパロディだったとは思えない。

 実際,『漫画家残酷物語』は永島版『漫画家残酷物語』のパロディのふりをしつつ,個々の短編はいずれも単独で読めるものとなっている。
 巻頭の「サムソン」こそ永島版「うすのろ」を登場人物,コマ運びまでそっくりパクった構成になっているが,その内容はエロマンガ家たちの暴走と哀愁を情けなく描いたもの。その後のパクり度の低い各編となると,おそらく永島版を知らないで読めばいつもの唐沢ギャグに過ぎず,違和感を抱くこともないだろう。
 ……だが,いつもの唐沢ギャグに見えながら,妙な読後感が残る。なぜか。

 近年の唐沢なをきは,メカフェチ,2次コン,ロリコンなど,いわゆる「おたく」を素材に,その生態を揶揄する作品を書き続けてきた。本作に登場するおかしな漫画家,編集者,マニアたちも,そこから遠く外れてはいない。ただ微妙に違うのは,それが作者本人が所属する漫画界を舞台にしていることだ。

 そのためか,苦笑いして読み進むうち,それぞれのギャグがひょっとしたら本当にあった話,実在の人物を描いたものでないかという疑念がコップの中の積乱雲のように湧き起こる。そのとき垣間見える痛々しさは,意外なほど永島版と遜色ない。いや,永島版から40年を経て,漫画界,出版界が産業として巨大化すると同時に硬直し(あえて成熟とは言うまい),少年誌と青年,レディース誌,商業誌と同人誌などのセグメント化が進んだだけ,ますます身動きならない,救いのない業態になっているようにも見える。
 いやしかし,いくらなんでもそんな読みはないだろう,各ページにはおたわけギャグが並ぶばかり,こんなものにシリアスな作者の本音がこめられているとは……と,まるでオセロの盤面のように何度も白黒反転する読み応え。
 いじられているのは,漫画家なのか,読み手なのか。

 それでも,いくつかの作品で,唐突に永島版の登場人物やコマがぱっくりと再現されているのを見ると,スコーンと足元が抜けるような思いにかられる。
 『漫画家残酷物語』は青春だった。『漫画家残酷物語』は,言ってしまえば黒い冬。ちぇっ。

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